第7話

(AI)

「…なるほど、『運命』の能力はコピーだったか…!」

 棗は景斗から槍を奪う。

「もらった!」

 そして棗が構えると、棗の手には既に槍があった。

(やった!)

 しかし次の瞬間にはもう腹に穴があいていた。

(!?……そうか『逆転』か!)

 景斗が言う。

「それもコピーして


(俺)

 るのか、やばいな。なんでもコピーできるんじゃない?でも駄目だよ、相手の能力もちゃんと考えなきゃ。」

「『逆転』…なるほど、私が刺したその瞬間に発動したってことか……」

「そ、攻撃の対象を『逆転』させたわけ。」

「じゃあ、取引だ。」

「は?」

「この攻撃を受けたという結果を逆転させたら、どうなると思う?」

 それが棗にできる最大限の脅しだった。

「ああ、そうだった、お前も逆転できんのか……」

「そういうこと。んで、取引なんだけど、今後組織の邪魔をしないでくれたら逆転はしないであげるよ、っていう内容。」

「……わかった、ただ『俺が邪魔しない』じゃなくて『お互いに干渉しない』ということにしてくれないか?」

「いいよ」


(AI)

 棗は景斗と取引をして、その場を後にした。

(意外とあっさりだな……)

 そして棗が去った後、少年が一人呟いた。


(俺)

 お前は『逆転』のコピーで来瀬を治そうとしてるんだろうよ…でも無理だろうな。お前はそのまま死ぬ。そういう『運命』なんだ。」

 棗はすでに限界だった。


(AI)

「……うっ!」

 腹の穴は『逆転』で塞いだものの、やはり怪我は治らない。

「まだ……だ……」

(意識を失ってはいけない……)

 棗は何とか立ち上がり、最後の目的地である病院に向かうのだった。

 そうして病室のドアを開ける。来瀬さんは眠っていたが、寝息が聞こえるので生きているみたいだ。

「良かった……」

 棗は安堵して、来瀬さんの手を握


(俺)

 ろうとした。

「――。」

 棗はその場で倒れた。

 怪我を塞ぐのにも限界が来たらしく、血が流れ出る。

「来瀬…さんを………」

 来瀬詠歌を救うのは不可能だった。

「だから無理だって言ったじゃん。」

「…!?」

 そこに立っていたのは忽之景斗だった。

「何で…!!」

「ちょっとくらいなら協力しても良いんじゃないかな、なんて思っちゃったんだよ。君の能力はもう焼き切れてるだろ?だから僕が治してあげるよ。でも、僕が治すのは一人だけだ。」

「…私か、来瀬さんか、選べってことですか……。」

「そういうこと」

 ならば答えは一つだ。

「私は死んでもいい、から……だから来瀬さんを、治してください…!!」

「おっけ」

 景斗は詠歌の手を握る。

「『逆転』」

『治らなかった』状態から『治った』状態へと……


 棗は目を閉じた。


 そして一人、永い眠りについた。


(AI)


 もう、思い残すことは無い。

 棗が目を覚ますと、そこは病室のベッドの上だった。

(あれ?私は死んだはずじゃ……)

 体を起こして周りを見るも誰もいない。しかし机の上に手紙があった。

(これは……)

 その手紙には『忽那景斗』と書いてあった。

「来瀬


(俺)

 は治した。お前はそこで、『天獄』で待ってろ。」

「…そっか。私、死んだんだ。」

 しかし手紙には「待っていろ」と書かれていた。


(AI)

 つまり来瀬は治ったのだ。棗がいなくても……

 いや、そんなことを考えている場合じゃない。

「待ってろってどういうことだよ……」

 そう呟いても答えは出なかった。

(まあ、待ってみますか!)

 そんなことを考えていると病室のドアが開いた。そこから入ってきたのは金髪の少女だった。


(俺)

「お目覚めですか、九条様。」

「え、あっはい。」

(え?…急に可愛い子が来た…!?)

「では、早速ですが」

「…はい」

「あなたは『転生リセット』をご希望ですか?『更生コンティニュー』をご希望ですか?」

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