第6話

 あれだけ格好つけて出ていったは良いものの、服は見つかって無かった。女性用のレギンスとパーカーを着てギリギリ男子でもいそうな服装にしてはいたが、正直不安だったので服屋に行くことにした。勿論一人だ。

「ぼっちってわけじゃないのに悲しい……」

 男物の服を何着か買い、その場を後にする。


(AI)

(本当はもっと買いたいけど、お金がな……)

 そんなことを思いながら帰路につく。

「あとは神の声だけか……」

 そう呟くと同時に後ろから声がした。

「何が?」

「!?!?」

(ヤバい、今の聞かれてた?!)

 そんな焦りから棗は振り向きながら言う。

「ぼ、僕の声のことです。」

 するとそこには棗と同じくらいの年齢の少年が立っていた。背は棗より少し高いくらいで、黒髪だ。

「ああ、君の


(俺)

 声ね…えっ君の声!?神の声ってどういうこと!?」

「い、いやぁ、ぼ…俺は実は神なんだ……」

 苦しすぎる言い訳をしていた。


(AI)

(さすがに無理があるか……?)

「は?」

 少年の冷たい視線が棗を突き刺す。

(ですよねー)

「じ、実は男になったんだ!信じてくれ!」

(うっわ恥っずい!なんだこれ!?)

 しかしそんな棗を見て少年は……

「……面白いね」

 そんな反応をした。

(え、今ので納得すんの!?)

「信じて……くれるんですか?」

 棗がそう聞くと少年は少し微笑んで答える。

「うん」

 そんな少年の笑顔を見て棗は安心すると同時に、彼の力になりたいと思った。しかしそんなことを思っていると少年が言う。

「じゃあ自己紹介しようかな?」

(え、もしかして男なのバレてる?)

「僕は忽之景斗。」

(なんだ自己紹介か……ってええええええええ!?)

 そんな棗を見て少年は笑う。

「反応が面白いね。君の能力は『運命』かな?」

「っ!」

(この人


(俺)

 が逆転させるっていう…あの!)

「いいね、君。楽しそうだ。」

「へ?」


(AI)

 性別を変える…トランスセクシュアルか。噂に聞いてた『運命』の能力者は君だったか。」

「う…運命?」

「そ、僕は『逆転』で、君の二人の友だちは『生命』と『保持』で、組織の男の子は『通信』か。あと膝下ちゃんは『読心』で、眼鏡ちゃんが『編纂』と、あと『創造』くんもいるのね。」

「なっ……」

 完全に人間関係を把握されてる。

「何で知ってるかって?これに書いてあるのさ。」

 そうして景斗が取り出したのは『世界帳』と書いてある本だった。

「ここに書いてあることはすべて現実になる」

「ま、まさかそれで私のことを…!」

「そうだよ、でも本当に凄いのはそこじゃない。この記録帳、書き加えることができるんだ。そして書いたことはすべて現実になる。」

「…!!」

 恐ろしいものを手に、景斗は言った。

「君は僕に勝てない、それは『逆転』を持っているからとも言えるし、『世界帳』を持っているからとも言えるけどね。」


(AI)

 っ……」

 景斗は続けて言う。

「君は今、二つの選択肢を迫られているんだ。」

(え……)

 棗は固まる。しかしそんな棗を置いてけぼりにして景斗は続ける。

「一つ目はここで僕に殺されること」

(こっわ!この人こっわっ!!)

 景斗が棗に指を指す。すると次の瞬間には、棗の腹部には巨大な槍が刺さっていた。

(っ!……は?何が起きたんだ!?)

 そんな混乱の中、景斗は続ける。

「そして二つ目は僕に『取引』を持ちかけることだ」


(俺)

 何で私の腹に槍刺さってるの!?)

 痛みはなかった。


(AI)

「槍が刺さっていることに驚いているね。でもこれが僕の能力だ」


(俺)

「能力…?」

「そ、結果を『逆転』させるのさ。君の腹に槍を刺したら起こる『腹に風穴ができる』という結果を『傷一つつかない』という結果に逆転した。でも、能力を解けば君は死ぬよ。」


(AI)

(っ!)

「じゃあ話を戻そう、


(俺)

 乗ってくれるなら協力してあげるよ。」

「私は何をすれば…?」

「私…か。そうだった、君元々女の子なんだもんね。じゃあ


(AI)

 取引の内容を話そうか。」

(何の取引を……)

「僕の組織に入ってくれるかな?」

 景斗は棗の目を真っ直ぐ見ながら言った。

「え……?」

(何故私が?


(俺)

 というか、そもそも組織にはもう入ってるんだけど…)

「組織には入ってるんだろ?だから、その組織を裏切れって言ってるの。」

「それ結局協力してないじゃないですか!!」

「してるさ、だって僕は組織の敵なんだから、裏切った子に協力するって言うのは結果としちゃ間違ってない。」

(要は死ぬか、組織を裏切るか選べってだけか…)

「…なら、私は死んだほうが良い。」

「そっか」

「でも、抵抗はさせてもらうよ。」

(私は『男の子』になった……これが『運命』の能力なら……!!)

 性別の『逆転』。これはつまり――

「『コピー』だ!!」

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