第5話
(AI)
「え、ちょ、どゆこと?」
(ま、まさか……)
棗は恐る恐る自分の股に手を当てる。
「……ある」
そして改めて自分の顔を見る。その顔立ちは、男性化前とは違っていた。まるで中性的な少年のような印象を受けるのだ。
(もしかして私男になった!?)
(俺)
「ちょっ…ど、どうしよう…!!」
このままでは学校に行けないどころか、母親に会えるかどうかすら怪しい。
(AI)
「こ、こんなこと親に言っても信じないよな……」
棗は必死に考える。そしてある結論に至った。
「……よし!」
それは……
(とりあえず
(俺)
皆に相談しないと!)
神声者のプロに聞くことであった。
(AI)
「と、言うわけでして……」
棗は
(俺)
いつの間にかできていたグループチャットにその旨を書き込んでいた。
(AI)
『マジか……』
有多さんから返信がくる。
『ちなみに男になったことは親には?』
「言ってません!」
棗は即答した。
(言ったらどうなることか……)
棗の母は元から心配性なところがあるため、言ってしまえばどんな手を使ってでも登校を止めさせようとするに違いない。
(俺)
というかそもそも、その男が九条棗であるということを認識できるかというところからだ。
『わかった、じゃあ迎えに行かせるから』
『俺か』
どうやら京也さんが迎えに来てくれるらしい。
「じゃあどうしよっかな」
(待ち時間は多くないけど、かと言って暇がないわけでもないし。)
仕方がないので、棗は『男装』をすることにした。男になっているとはいえ、しっかり『男子っぽく』振る舞わなければ不審に思われてしまう可能性がある。
「でも服持ってないな…」
(AI)
棗は普段、親に買ってもらった服ばかりを着ている。そのため、男物の服など持っていないのだった。
(えっと……あれ、下着ってどうすりゃいいんだ?)
そんなことを考えたときだった。
(俺)
パリン、と音を立てて空間が割れた。
「…昨日ぶりだね~、棗くん」
「……ちゃんでいいです。」
そんな他愛もない会話をしている場合じゃないので、さっそく本題に入る。
「あの、これなんなんですか?」
「…神の声、つまり能力だろうね。」
(AI)
「え、神の声ってこんな能力もあるんですか?」
「……さぁ」
どうやら京也さんでもわからないらしい。
(やっぱりこれ異質すぎる……)
「まぁとりあえず今日は休みな。学校にはうまく伝えとくよ。」
(ありがたい……けどどうやって……?)
棗の心配も気にせずに京也は続ける。
「よし、じゃあ行くぞ。」
「……え?」
棗は急に浮遊感を覚えた。そして次の瞬間には別の場所にいた。
(テレポートか……)
「おう、きたな。」
(へ?)
目の前の光景に棗は目を疑った。なぜならそこは
(俺)
――
「ここは…
(AI)
病院?」
そう、棗がいた場所はなぜか病室だった。しかも……
「あれ、先輩?お知り合いの方ですか?」
そこには先客の少年がいた。
(この男の子って確か……)
そう、その少年は九条棗が不登校になる前によく一緒に遊んでいたクラスメイトだったのだ。
(なんでここに?)
棗が聞く前に京也さんが答える。
「ああ、こいつはな」
そして京也さんは自分の正体を打ち明ける。
「能力者だよ。しかも神の声の持ち主だ。」
(え!?なんで言っちゃうの?!)
しかしそんな棗に対して京也さんは言う。
「こいつならお前の事情を話しても大丈夫だと判断した。」
(な、なるほど……)
棗は納得した。そして京也さんは少年に言う。
「というわけだから、悪いがあまり詳しくは話せないんだ。すまんな」
(さすが大人だ……)
棗は尊敬の念を抱いたのだった。
(俺)
「いいですよ、僕も一応助けられた身なんで。」
「あの、あなたの能力って……」
「…簡単に言うと、死んだ人を蘇生することができるんだ。対価として、その人が死ぬ直前に背負った傷を僕が負わなきゃいけないんだけどね。」
(まさか、学校に来なくなった理由ってそれ…?)
誰かを救うことで追った傷のせいで学校に来れなくなったのだとしたら、それはあまりにも報われなさすぎる。
「どうして、私をこの子に――晴くんに合わせたんですか?」
「…それは、お前と
(AI)
問題を解決してもらうためだ。」
「え?」
棗は絶句した。
「いや、だってそんな能力があったらもう解決してるはずじゃないですか!」
(なんでわざわざ?)
そんな疑問を察したのか京也さんは続ける。
「いいか、棗。須杭晴の能力は『傷を癒やす
(俺)
』能力じゃない、あくまで『死』という結果を被害者と二人で分割して請け負っているだけだ。つまり――」
「…つまり?」
「晴が救った少女、
「え!?えっと、歩くんは…?」
歩くんのことを無視していいのだろうか。
「あいつは俺たちでなんとかしておく。歩は神を殺すのに必要な人物だが、来瀬の力は神に会うために必要なんだ。だからお前には来瀬を回復させることができる能力者を探してもらう。」
来瀬さん…彼女も棗のクラスメイトだった。
「私は、誰を探せば良いんですか!?」
棗は低くなった声で言う。
「俺たちが目をつけているのは『出来事の結果を逆転させる』能力者、
「景斗さん…わかりました。」
棗は病室を出た。
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