第2話
(AI)
「お、おはよう!」
翌朝、棗は廊下ですれ違った悠里に声をかけた。
「あ、おはよう九条さん」
「ゆ、悠里ちゃん!よかったら一緒に学校行かない?」
緊張のためか少し声が裏返ってしまう。そしてそんな棗の様子にクスリと笑いながらも悠里が言葉を返す。
「もちろん!」
そう言って二人は並んで歩き出す。しかしそれからしばらく沈黙の時間が続くと、やはり話題が見つからずに再び気まずい沈黙が流れるのだった。
(やばい……せっかく話しかけてみたのに会話が弾まない……)
そんな棗の様子に悠里が苦笑する。
「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ。九条さんはもっとリラックスした方がいいと思うな」
「え、でも……」
「私みたいなコミュ障にそんな気を遣う必要なんてないよ」
(コミュ障って自分で言っちゃうんだ……)
そんな悠里の物言いに、棗は思わず笑ってしまう。そして、そのまま言葉を続けるのだった。
「じゃあ私もコミュ障になる」
そのあまりに脈絡のない言葉に、
(俺)
悠里は驚く。そしてそれと同時に笑う。
「コミュ障になるって何ー?」
「わかんない、でも友達の為なら何にでもなれるんじゃないかなってさ?」
「かっこいいなあ、九条さんは。」
冗談ではなく本当に格好良いと思っている悠里に気づかず棗はこの時間を楽しんでいた。
(AI)
しかしそんな時間は唐突に終わりを告げる。
「あ、いた!悠里ー!」
廊下を歩いていた二人組の女子が悠里を呼んだのだ。一人は黒髪で眼鏡をかけた真面目そうな生徒だった。もう一人の少女は茶髪にパーマをかけておりスカートは膝上10cmと短めだ。その隣には黒いマスクをつけた男子生徒もいる。
「わ、私はこれで……!」
「あ、うんっ!」
棗の様子に悠里もまた頷くと、その場を離れたのだった。
(
(俺)
いやいや、あれ絶対悪い人たちでしょ!!)
膝上10cm校則違反だし、髪染めちゃいけないし!
「待って待って、用があるんだよ。」
無我夢中で走っていた棗の前に急にマスクの男子生徒が現れる。
その男子生徒にぶつかり、棗はようやく彼の存在に気づいた。
「うわあああ!?」
棗は半分涙目になっていた。
「ああっクソッ!何でわざわざ不良のふりなんかしなきゃなんねーんだよ…!というかしなくていいだろ!」
「ふ…ふり?」
「ああ、そうだよ。俺たちはあんたと、あっちの子に用があってきた。」
その男子生徒が指を指した先には、悠里がいた。
女子生徒に拘束されて足をバタバタさせている悠里がいた。
「落ち着けって、別にアタシはあんたらをボコろうってわけじゃないんだから。」
「その思考がすでにある時点で怖い!!」
「もう要件言っちまおうぜ?」
「…そうね。」
男子生徒と女子生徒が目を合わせて何かを決めたらしい。
(あれ、もう一人女の子がいなかったっけ?)
「駄目よ。」
どこからか声が聞こえた。
「あくまで協力するかはその子達次第なの。」
「協力?」
「そう、私たちはとあることを調べようとしている。そのためにはあなた達の力が必要なの。」
突如、棗と悠里のちょうど間あたりのところに先程の眼鏡の女子生徒が現れた。
「瞬間移動!?」
「いいえ、あなた達が『見ていなかった』だけよ。…いや、そんな事はいいの。」
その女子生徒は再度、わたしたちに問いかける。
「協力、してくれる?」
(AI)
棗は、その提案に頷くことはできなかった。
しかし悠里は……。
「分かりました。」
(ゆ、悠里!?)
まさかの回答に棗は驚くも、それを表に出すことはしなかった。そして次に眼鏡の女子生徒が口を開く。
「あなたはどうかしら?」
(協力するかどうか……そんなの答えは決まってる!)
棗はすぐに返事をしようとするも、先程の女子生徒の言葉を思い出す。『あなた達』と彼女は言っていたのだ。ということは自分が返事をすることによって悠里
(俺)
と私だけではない他の人にもこの人たちがなにかするかもしれない。
考えすぎかもしれないが、考えてしまった可能性を捨てきるのは難しい。
「たち、っていうのは誰のことを指しているんですか?」
分からなかったら聞くのが正解だ。
「…そうね、それを教えておくべきだったわ。大丈夫、あなたと悠里さん、そして莉緒さんだけよ。」
(名前を抑えられている…。)
(AI)
そのことに驚きながらも棗は話を続ける。
「分かりました。では、その協力する内容を教えてもらえますか?それが分からない限りは返事のしようがありませんし……」
「それもそうね、いいわ」
(とりあえず話を聞くことに集中だ)
棗は目の前の女子生徒に集中した。
(俺)
「守野歩くんについて、知っているかしら?」
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