第13話 ネスタ遺跡の探索、調査
ネスタ遺跡の探索、調査を行う冒険者はとある場所で集合することになっている。そこは前回、ネスタ遺跡を探索する際に使われた拠点だ。
「思ったより少ないな」
ネスタ遺跡から少し離れた拠点、整備はつい最近されたらしく、意外と整っているが、それ以上に気になったことがある。
それは冒険者の数だ。
見渡した感じは20人程度、パーティーで数えるなら5から6パーティーぐらいだ。
「最低でも40人ぐらいは来ると思ったんだけどな」
「ねぇ、レイン。あれがネスタ遺跡?」
テラが指さす方向にはすでにネスタ遺跡の一部が見えていた。
「意外と汚いだろ?」
ネスタ遺跡は街の外に広がる森にあり、こけまみれだ。
「うん。でも遺跡って感じがしてワクワクする」
「遊びに行くわけじゃないぞ」
「わかってる。でも、心の底からワクワクする」
珍しくテラはウキウキだった。
まあ、冒険神話ルシアスのファンだし、そうなるのも無理はないか。兄さんもここに来たときは子供みたいにはしゃいでたし。
しばらくすると、豪華な装備を身につける一人の男がみんなに聞こえる声でしゃべり始める。
「全員集まったみたいだね。僕の名前はアダル・マルスール。三つ星冒険者のこの探索、調査のリーダーを務めることになった。みんな、よろしく」
三つ星冒険者アダル、この街では有名な方の冒険者だ。
「今回探索するのは、ネスタ遺跡で発見された新しい道だ。危険はそこまでないと思うが、気を付けてほしい。それと、もし僕たちは対処できない場合は、緊急用に冒険者ギルドから配給された転移結晶を使い、即座に撤退する。そのため、できる限り、離れず、団体で行動してほしい」
転移結晶は指定した位置に移動するアーティファクトで、とても高価な物だ。
一度にたくさんの人を転移させられるから、こう言った探索などで使われることが多いが、まさか冒険者ギルドが配給するとは。
念には念をってことか。
「質問いいですか?」
「何かな、ゲニーくん」
ゲニーの名前が耳に入り、覗いてみると俺たちがいるほうと反対側にゲニーが率いるパーティーがいた。
「団体行動はどこまで許容なんですか?いくら団体行動とはいえ、団子になっては意味がない。それこそ、戦闘になったときに邪魔になります」
「その通りだ。そこで遺跡探索、調査の際は陣を形成することにした。すでに今回参加するメンバー、そしてパーティーは僕の頭の中にあるから、僕の指示に従い、定められた位置で行動してほしい。だが、僕を含め君たちは冒険者だ。めぼしいものがあればほしいし、客観から見れば僕が得するのでは?と思ってしまうだろう。だからあくまでできる限りだ。自分の生存率を上げるか、危険を冒してまで、お金を取るか、それは君たち次第だ。これで答えになったかな?三つ星冒険者のゲニーくん」
「ありがとうございます、アダルさん」
「さぁ、それじゃあ早速、団体行動する際の位置を発表する。しっかりと聞くように」
こうして、ネスタ遺跡の探索、調査を始める前の説明が行われた。
そして俺たちが定められた位置は一番後方だった。
「まあ、そうなるよな」
普通なら六つ星冒険者がいるパーティーは前に出されるはずだが、相方は二つ星冒険者だ。怪しく見ているんだろう、三つ星冒険者アダルは。
「まあ、どこに配置されてもいいんだが…………」
問題はゲニーが率いるパーティーが先頭に置かれていることだ。
これじゃあ、話す機会を作るのはまず無理だ。
「心配ごと?」
「うん?ああ、ちょっとな」
ゲニーとライラは今、仲がよくない。そんな状態で依頼に
「大丈夫だよ、レイン」
「そうだな。最悪、六つ星冒険者のテラさんがいるんだし」
「ど、どういうこと?」
「どういうことだろうな。それより、そろそろ出発みたいだ。準備するぞ」
準備が整い、各パーティーが配置についた。
「それではみなさん、出発しましょう!!」
「「「おっ!!!!!」」」
「あ、暑苦しい」
「おっ!!!!!!!!ってレインも」
隣で一緒に叫んでいるテラは乗り気のようだ。
「…………お、お!!!!!これでいいのか?」
「うん」
「やっぱり、テラってどこか変だ」
こうして、ネスタ遺跡の探索、調査が始まったのだった。
□■□
ネスタ遺跡、六英雄と邪竜ファブニールが戦った場所と言われている観光名所。
誰もが知るその場所で新たに見つかった道の探索、調査のため、冒険者が派遣された。
「あんちゃん、なかなか体力あるねぇ」
「誰だよ、お前」
「俺を知らねぇのか?俺はなぁ、筋肉に愛され、筋肉を愛する二つ星冒険者、ダンクだ!よろしく!」
ムキムキな筋肉を自慢される俺は苦笑いがこぼれる。
「それで、あんちゃんの名前は?」
「レインだ」
「レインか、いい名前だな!がははははははははっ!!」
「うるさい奴だな。口を閉じたらどうだ?」
「ひどいことを言うなよぅ。同じ二つ星冒険者として、一緒に頑張っていこうじゃないか!!」
こんな暑苦しい奴と配置が一緒とか、最悪だ。でも、こいつの隣にいる奴は知っている。
「お、俺のパーティーメンバーが気になるか?ほら、自己紹介だ」
「めんどくさい…………四つ星冒険者ナル」
「おいおい、ナルちゃん。そんなツンツンするなって、ほら仲良くしないといざって時に協力できないだろ?」
「協力?そんなの必要ない。六つ星冒険者がいるんだし」
ナルさんはどうやら、テラのことを知っているようだ。
まあ、それなりに目立っていたし、知らないほうがおかしい。
「いやぁ、六つ星冒険者に会えるとは中々ない機会だ!!」
偶然か、それとも必然かは知らないが、一番に後ろに配置されたのは二つのパーティーだけだ。そしてその中に、この遺跡の探索、調査の最高戦力といえる四つ星冒険者、六つ星冒険者の二人がいる。
いったい何を考えているのやら。
「私のこと?」
「テラしかいないだろ、どう考えても」
しかし、まさかあの四つ星冒険者ナルと会えるなんて、これだけでもこの依頼に参加したかいがある。
四つ星冒険者ナルはこの街でも有名なソロ冒険者で、しかも実力だけを見れば五つ星冒険者に匹敵するとか。でもまさか、パーティーを組んでいるとは知らなかった。
しかも、ムキムキのやばいやつで同じ二つ星冒険者。
「どうしたのかな、あんちゃん!もしかして、俺の筋肉に見惚れて…………」
「なわけないだろ。というか、よくパーティー組めてな、あのナルさんと」
「六つ星冒険者という世界で500人といない冒険者で、しかもエルフ…………どう考えたってそれはこっちのセリフだと思うんだがなぁ、あんちゃん」
「…………そうだな。その通りだな。ならある意味似た者同士である俺らがこうして出会ったのは偶然か?」
その言葉にダンクはこちらを見つめる。
「まあ、偶然にしてはできすぎだとは思うが、三つ星冒険者アダルは頭が回る。なにか考えがあるんだろう、さぁ!!!」
「ダンクはいちいち、筋肉を見せびらかさないと気が済まないのか」
「この人はそういう人だから、気にしなくていい」
「おい!ナルちゃん!今俺の悪口言ったか?」
「悪口じゃない。事実を言っただけ」
「なら、いいか!!」
二人は仲がいいのか、悪いのかよくわからない。
ただ傍から見れば、悪いわけではなさそうだ。
ネスタ遺跡内を進んで行くと、途中で全員の足が止まる。
どうやら、ここからは新しい道、つまり未開拓領域だ。
「全員、集まったな」
配置された位置から一度、離れ冒険者全員が集められた。
おそらく、これが終わったら、次に全員集まるのは探索、調査を終えた後になるだろう。
「ここからは先は未知だ。何が起こるかわからない。できる限り、団体行動をしつつ、何か見つけ次第、この共鳴石で報告するように。では、行くぞ!!」
こうして、本格的にネスタ遺跡の探索、調査が始まったのだった。
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