第12話 パーティー存亡の危機らしいよ?

 後ろを振り向くと、そこにはルリカ、シェルミーがいた。



「覗き見というか、通りかかったら」


「はいはい、そういうことにしとくっすよ」


「おい、俺がそんなことをする人間に見えるか!!」


「見えるっす」


「今までのレインの言動を振り返ると」


「マジかよって、それよりなんでルリカ、シェルミーがここにいるんだよ」



 ルリカ、シェルミーは同じ村出身の幼馴染。

 そして、ゲニーのパーティーメンバーであり、俺にとっては元パーティーメンバーだ。



「そりゃあ、あれを見ればわかるっすよね?」


「レイン、今、私たちはパーティー存亡の危機なんだよ」


「存亡の危機?どうして、そんなことになってるんだよ」



 そう問いかけると、呆れた表情を浮かべる二人。



「本気で言ってるんすか?もしかして、レインくんって鈍感キャラ?」


「なんだよそれ」


「レインがパーティーからいなくなったのが原因だよ」


「…………なんで?」


「本気ぽいっすね」


「場所を変えよう。そこで詳しく話すよ、レイン」



 俺はルリカ、シェルミーの後ろについていき、噴水広場のベンチに腰掛けた。



「なんで、俺が真ん中なんだよ」


「こっちのほうがしっくりくるからっすよ。ね、シェルミー!」


「そうだね、昔を思い出すよ」


「何を思い出してるんだよ。それで、なんで俺がパーティーからいなくなったのが原因でパーティー存亡の危機になってるんだよ?」



 おかしいだろ。だってパーティーを抜けたのは、俺が弱いからで、みんなを思ってのこと。ゲニーはみんなの思いを代弁し、俺に嫌われる覚悟を持って伝えてくれた。


 パーティー存亡の危機になる要素なんて一つもなかったはずだ。



「レインがパーティーを抜けたとき、ライラちゃんが暴走して、ゲニーと揉めちゃって、ここずっと同じことの繰り返し」


「揉めるって」


「ライラちゃんは、ずっと”どうして、レインがパーティーを抜けなきゃいけないの?せめて、相談ぐらいしてよ!”って感じで、レインくんが抜けたのが相当ショックだったみたいだったすよ」


「なるほどな…………」


「まあ、ライラちゃんはレインにべったりだったからしょうがないとは思うけど、でも、せめてレインが自分の言葉で抜けるって言ってくれれば、こんなことにはならなかった」


「そうそう、そういうことっす!!」



 二人の言い分を聞き、たしかに、自分の言葉で伝えるべきだったと思った。


 まあ、たしかに俺たちが冒険者になる前はいつも一緒で、ただ遊ぶ日々だった。言うなれば、友達が急に良くなるのと同じだ。


 ゲニー任せてしまった、俺の責任だな。



「それに私たちとしても一言、せめて相談してほしかったよ」


「うんうん!友達!親友!大親友なんすっから、相談してほしかったす!」


「お前ら、いいやつだな。本当に」



 俺は改めて、友達に、パーティーメンバーに恵まれたいたことを実感した。



「というわけで、時間があった時でいいから、ライラちゃんと会ってほしいの」


「え、会わなきゃダメ?」


「当たり前でしょ!このままじゃ、ライラちゃん、何するかわからないし」


「時間が解決しそうだけどな」


「レインくんのそういう淡白なところ変わってないっすね」


「笑い事じゃないんだけど、ルリカ」



 ルリカにギラっと強くにらみつけるシェルミー。

 相変わらず、仲良しな二人だ。


 とはいえ、俺がライラに会ったところで、抜けたことに変わりはなくて、ライラの性格的にむしろ感情的になると思う。


 だったら、何も触れず、ライラが冷静になるのを待ったほうがいい。そのほうが、きっといいはずだ。



「とにかく、絶対にライラちゃんと会って、わかった?」


「わ、わかったよ。でも俺、二日後、遺跡の探索、調査の依頼があるから。それ以降な」


「遺跡の探索ってネスタ遺跡の?」


「あ、ああ、そうだけど、もしかして…………」


「それ、私たちも行くっすよ!」



 ルリカの元気な声にため息を漏らさずにいられない。



「ま、まじかよ」


「それじゃあ、二人の時間は作ってあげるから。お願いね」


「お願いっす!!」


「わかったよ」



 こうして、話を終えた俺たちは、道の途中で別れた。



「はぁ、疲れたぁってそういえば、ご飯を食べに来たんだったな。もうどこでもいいや」



 俺は適当にお店を選び、ご飯を食べるのであった。



□■□



 そして、2日後、ついにその時が来た。


 装備を新調し、ポーションをできる限り用意して、できる限りのことはすべてした。



「冒険者は最悪の想定をしてこそ冒険者である!これもルシアスの言葉だ、うぅ、かっこいいってテラはまだか?」



 俺は泊まっていた宿の入り口前でテラを待っていた。



「ご、ごめん。遅れた」


「まだ時間的に余裕はあるけどなってその髪飾りどうしたんだよ」


「気づいた?昨日買ったんだ。たまにはこういうのもつけるのいいかなって。似合うかな?」


「あ、ああ似合ってるよ」



 蝶々の髪飾りをつけるテラ。些細な変化ではあるが、とても美しかった。


 やっぱり、エルフって美人すぎる。


 俺は反射的に倒れてしまう。



「どうしたの、レイン?」


「あ、いや、ちょっと目が痛くて。あ、でも今治ったから気にしなくていいぞ」


「そ、そう。ならいいけど」


「それじゃあ、行くぞ、テラ」


「うん」



 こうして、俺たちはネスタ遺跡に向かったのであった。






 


 


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