第9話 大食いテラ、そしてふとした再会
パーティーを組んだ俺とテラ、それを祝して外食をとることにした。
そして、訪れたのが俺とテラが初めて出会ったお店だった。
「
「そうみたい」
お店に入ると、女将さんの完璧で飽きない接客が目に入り、それはもう物凄く賑やかだった。
「おっ、お客さんかいって、あたら昨日の、なになに、もしかして相違関係になったのかい?」
「違いますよ。ただパーティーを組むことになったので、一緒に」
「そうかい。それじゃあ、席に案内するよ」
席に座り、メニュー表を開くテラは次々と注文する。
「おい、テラ。そんなに頼んで大丈夫なのかよ」
「大丈夫。このお店の料理はおいしいから」
「そ、そうか」
このお店の料理はどれも値段に対して、量が多い。よく言えば、コスパがいい。悪く言えば、多すぎる。
昨日のミスはもうしない。今日は一品だけにしよう。
俺は一品だけ頼んだ。
「なぁ、一つ質問していいか?」
「何でも聞いて」
「どうして、俺と冒険したいって思ったんだよ。まだ出会って二日目だぞ?」
テラの言葉は俺の心に深く突き刺さった。果たして、テラとパーティーを組むことが正しかったのかはまだわからないが、今の俺は心が軽く感じている。
だからこそ、思う。どうして、俺と冒険したいって思ったのか。
だって、普通、見知らぬ冒険者と一緒に冒険がしたい、なんて思わないはずだ。
「…………勘かな。ほら、人族ではこういうんでしょ?女の勘って。だから、そう勘、レインを見たとき、この人と一緒に冒険がしたいって思ったの」
こちらを見て、ニコリと笑う。
その笑顔は美しく、芸術とさえ思えてしまう。
か、かわいいってそうじゃない!
「女の勘か、俺にはわからないな」
「…………迷惑だった?」
「いや、むしろ感謝してる」
「そう、ならよかった」
少し、変な空気感になったところで、女将さんが料理を持ってきた。
「イチャイチャするのはいいけど、ほどほどにだよ。じゃないと、周りのお客さんに火つけちまう。ほら、たくさん食べるんだよ。あとサービスしておいたから」
「さ、サービス?」
そう言って、出された料理の数は明らかに頼んでいた数よりも多かった。
「こ、これは…………」
「な~に、私からの結成祝いさ。たくさん食べなよ。美人さんも」
「ありがとう」
机に並べられた料理。それは質と量を兼ね備えた山だった。
こ、これを今から食べるのか。
つばを飲み込み、前回のように覚悟を決める。
「レイン、食べないの?」
「今から食べる、うん。今から」
覚悟を決めたレインはそのまま必死に料理に食らいついたのだった。
そして、数時間後、無事に完食した。
「ふぅ、美味しかった」
「うぅ、うん。美味しかったな…………うぅ、吐きそう」
すでに胃袋限界状態のレインだが、テラは逆で余裕そうな表情を浮かべていた。
テラの胃袋はどうなってるんだ。
たくさん出された料理の中で俺が食べたのはたったの2割で残りはすべてテラが食べた。その量はたくさん食べる男性の量を超えていた。
「また来ましょう、レイン」
「そうだな」
力店でご飯を食べ終えた俺たちがお店を出ようとしたとき、入り口で人とぶつかり、両者とも尻もちをついた。
「いてて、すいません」
「こちらこそ」
そう言って、お互いが目を合わせるとそこには。
「げ、ゲニー?」
「れ、レイン?」
かつてパーティーメンバーとして共に冒険をしていたゲニーが目の前にいた。
どうして、こんなところに?
一瞬、状況が理解できず、困惑する中、テラが俺に目線を合わせ、耳元で囁いた。
「知り合い?」
「あ、まぁ、うん」
言葉を濁すレイン。
そんな中、一人の女性の声が上がる。
「れ、レインなの?」
「ら、ライラ」
ゲニーの後ろから顔を出すその女の子こそ、俺の幼馴染の一人、ライラ・クリスタリア。金色の髪のショートヘアに、緑色に輝く瞳、その容姿を見間違えるわけがなく、ほんの少し懐かしさを感じた。
そのさらに後ろには、ルリカ、シェルミーがいた。
「レイン、行こう」
「え、ちょっと」
テラは俺の右手をつかみ、ゲニーたちの横を通り過ぎる。
その時、ゲニーたちは振り返るが決して追いかけてくることはなかった。
□■□
宿に到着すると、部屋を二つ取り、各部屋に入った。
そして、すかさず俺はベットにダイブ、仰向けになって天井を眺めた。
「まさか、元パーティーメンバーに会うなんてな」
別に気まずいとかはない、と思うけどなんだが、あの時すごく言葉をかけづらかった。
「気にしすぎだな。それより、冒険者カードだ。あれだけ頑張ったんだ、レベルぐらい上がっているだろ」
俺は冒険者カードを確認した。
名前;レイン・クラフト
二つ星冒険者
レベル:10
スキル:なし
魔法:強化魔法9
・ステータス
力:60
魔力:147
素早さ:60
器用さ:45
賢さ:65
「い、一気にレベル3アップ?う、噓だろ!?」
あまりの成長っぷりに驚く俺は、静かにガッツポーズを取った。
「やっぱり、強敵との戦いがよかったんだろうな。なんせ、三つ星冒険者が本来、相手をするオークを倒したんだ。これなら、三つ星冒険者も近いかもな」
一気に上機嫌になった俺はベットの上で踊った。
すると、コンコンっとノック音が鳴る。
「誰だ?」
扉を開けると、そこには。
「どうしたんだよ、テラ。何か用か?」
テラがいた。
「ちょっと聞きたいことがあって、お邪魔してもいい?」
「べ、別に構わないけど」
「それじゃあ、お邪魔します」
テラを部屋に上げると、ひょこっとベットに座り、その横をポンポンっと軽く手を叩いた。
「横に座れと?」
「うん」
真剣な表情でそう言ってくるので、俺は素直に横に座った。
な、なんなんだ、この状況。
「それで、聞きたいことって?」
「今日鉢合わせた人たちってレインの知り合い?どんな関係なの?」
「…………あ、なるほど」
そういうことか。
どうやら、テラは今日あったゲニーたちについて聞きに来たようだ。
まあ、それもそうか、どう見ても俺の挙動がおかしかったし。
「まあ、知り合いみたいな、親友みたいな、仲間だったみたいな、パーティーメンバーみたいな?」
「教えてほしい、レイン」
テラはまっすぐと見つめ、顔を近づけてきた。
「なんで知りたいんだよ。別にテラには関係ないだろ?」
「パーティーメンバーとしてレインのことは何でも知っておきたい。それに、あの時のレインの表情がとても
「なんだよそれ」
俺が
そう疑問に思った。だが、テラが言うからには俺は本当に狼狽えていたのだろう。
「レイン、お願い」
テラはきっと本気で俺のことを心配してくれている。まだ会って間もないというのに。
この感覚、あれだ。おばあちゃんによしよし、されているような、そうお節介さんみたいな。
そうテラの言葉におばあちゃんのような温かみを感じたんだ。
「そうだな…………まあ、パーティーメンバーだし、知っておいたほうがいいか」
俺はテラにここまでの経緯を正直に話した。
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