第2話 冒険者とは
冒険者には星の数によってランク付けされており、一つ星から七つ星の七段階存在し、俺が前いたパーティーメンバーは大体、三つ星冒険者で、俺はもちろん、二つ星冒険者だ。
そして、兄さんは世界でも七人しかいない七星冒険者。
そんな兄さんを目標にしている俺は、みんなから無理だ、不可能だ、あきらめろと言われるが、それでも兄さんを目標に冒険者を続けている。
「レインさんが一人なんて、珍しいですね。ゲニーやライラさんはどうしたんですか?」
「実は…………」
俺は冒険者になったころから受付としてサポートしてくれるメルトさんに今の状況を説明した。
「え、噓ですよね?そんな、あんなに仲が良かったじゃないですか?」
「でも、これが現実だ。それに俺も理由としては納得しているんだ。俺は弱いから」
「レインさん…………まあ、レインさんが納得しているならいいです。それで、何の用で来たんですか?パーティーメンバーを探しに?もしくは依頼?」
「後者のほうだ」
パーティーを抜けた以上、俺ができることはソロで依頼を受けるか、新しいパーティーメンバーを探すか、もしくは加入するかだ。
でも、俺みたいなやつを新しいメンバーとして加入してくれるパーティーは存在しない以上、時間の無駄。なら、依頼を受けて、少しでも兄さんの背中に追いつけるよう、努力したほうがいい。
「わかりました。では少々お待ちください」
依頼が提示されるまでの間、受付前で待つレインは、ふとライラの顔が思い浮かぶ。
「ライラのやつ、大丈夫かな」
ライラ・クリスタリア、親友の中で最も距離が近しく、家族のような存在で、小さいころから常に隣にいて、兄さんにもよくなついていた。
「まあ、ゲニーがいるし大丈夫か。それに、これで少しはゲニーもライラにアタックしやすいだろうし」
ゲニーは隠しているようだったが、ライラに好意を寄せている。それは視線や態度ですぐに分かった。
ライラは可愛いし、村でも大人気だったが、なにせ、距離が近かった俺によくなついていたせいか、告白されることがなかった。
ゲニー、俺は応援してるからな。
「レインさん、今の星と実力だと、これが妥当です」
「どれどれ…………や、やっぱりか」
「すいません」
出された依頼は二つ、薬草採取と遺跡の見回りだった。
大抵の冒険者は、三つ星冒険者あたりで振るいにかけれることが多く、冒険者の半分が三つ星冒険者だといわれている。
そんな中、俺は二つ星冒険者。この時点で俺の無力さが伝わってくる。
ダメだ!弱気になるな!俺は決めたんだ。兄さんのような冒険者になるって!
大きく頭を左右に振って、再び依頼内容に目を通した。
「そういえば、今日、新しい依頼が追加されたんですよ」
「新しい依頼?」
「はい…………え~と、たしか。あ、これです」
依頼内容は遺跡内に見つかった新しい通路の探索、調査だった。
「これ、人数に制限がないので」
「ホントだ、珍しいな」
依頼は普通、人数に制限をを設けるのがほとんどで、制限がないというのは珍しい。とはいえ、遺跡の探索と調査という内容はすごく魅力的だ。
冒険者のルールで見つけたものは自分のものというものがあり、遺跡の探索、調査という依頼は冒険者に大人気だ。それに人数制限がないと来たら、それはもうすごい数になるだろう。
「…………1週間後か」
「もしよければ、引き受けるということで手続きを進めますよ?」
「え、いいんですか?」
「レインさんにはいろいろお世話になっていますから」
「それじゃあ、お願いします」
「はい!」
これはうれしい誤算だ。二つ星冒険者が遺跡の探索、調査の依頼は普通、受けることなんてできない。
メルトさん、ありがとう。
「それじゃあ、今日はとりあえず、薬草採取の依頼を受けるか」
「わかりました」
こうして、1週間後に遺跡の探索、調査の依頼を受けることになったレイン。
今日は薬草採取の依頼を引き受け、早速、街を出て森へと向かった。
□■□
薬草採取の依頼は駆け出しの冒険者が最初に受ける定番依頼の一つだが、決して簡単というわけではない。採取した薬草の品質を確保しつつ、冒険者ギルドに届けないといけないため、とても難しい。
「慣れたら、稼ぎやすくていい仕事なんだけどな。でも…………」
そんな薬草採取よりも稼げるのが魔物退治だ。
魔物を倒せば、それなりの実績になり、少しずつ大きな依頼を受けられるようになり、その先に七つ星冒険者という頂がある。
「まだまだ遠いけど、進むしかない」
俺は薬草採取しながら、森の奥へと進んでいった。
しばらくして、ふと鉄っぽい匂いが香った。
「鉄?いや、血の匂い」
匂いが香るほうへ足を向けて、ゆっくりと歩き出した。
「どう見ても血だよな」
途中、周辺の木々や地面に血痕を見つけた。
ここで戦闘であったのだろうか?でも、だったら、もっと周辺が荒れていてもおかしくない。
「答えはこの先…………うぅ」
強化魔法しか使えない俺だが、森周辺の魔物ぐらいなら、なんとか対処できる。だが、冒険者たるもの、最悪の想定はしておくべきだ。
レインは目をつぶり、感覚を研ぎ澄ませ、魔力全体を体に早く巡らせる。
「ブースト。これでよし」
強化魔法は基本的に自身を強化するだけの魔法だ。しかも、強化には限度があり、それを超えれば、オーバーフローして四肢がはじける。諸刃の剣といってもいい。
俺はオーバーフローの3歩手前まで、全身を強化し、前に進んだ。
そして、少し開けた場所に出ると、そこには真っ赤に血塗られた少女が祈りを捧げていた。その姿は美しく、見惚れてしまうほどで、すぐに首を左右に振って熱を冷ました。
「…………ふぅ、うん?」
こっちを向いた。
「あなたは…………レイン様ではないですか?」
「どうして、俺の名前を…………って」
「私ですよ、ルミナです」
艶やかに腰まで伸びる黒髪に、真っ直ぐ見通してくるかのような青色の瞳。まさに、その姿は聖女そのもの。いや、女神と言い表しても納得がいく。
しかし、どうして、聖女様がこんなところにいるんだ?そんな疑問が思い浮かぶ。
血塗られた服装からして何かしら襲われたのかもしれないが、周りには何もない。
「こ、これは聖女様」
とりあえず、頭を下げると、ルミナ様は近づき、俺の頬を優しく添えた。
「頭を上げてください」
「し、しかし」
「私がいいというのだからいいのです。それより、この近くで川はないでしょうか?洗い流したくて…………」
「す、すぐにご案内します」
こうして、俺は自分が知る一番近くの川に案内した。
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