第3話 臨時パーティ

手がぶつかったのは赤い髪の女だった。

「横取りだ?よく見ろよ俺の手のほうが下にある。」

「先に当たりを付けたのは私よ。」

「それが?実際手に取ったのは俺だよ。」

しばらくにらみ合うが相手が先に折れる。

「はぁ、わかったわ。パーティを組みましょう。私は魔法使い、貴方は剣士。即席にしてはそこそこじゃない?」

ふむ、悪くはないな。俺だけだと咄嗟に反応できないから遠距離サポートがいるだけでだいぶ変わってくる。

「OK乗った。報酬は折半。期限は来週までだから出発は明後日。じゃ臨時パーティで申請しに行こうか。俺はハルト、よろしく。」

「私はユーリ、魔法使いよ。よろしく。」

条件がまとまり、自己紹介も終えたので受付の窓口まで行く。

「すいません、二人でパーティ組みます。」

「はい、かしこまりました。」

ギルドを出て、ユーリと話しながら歩く。

「へぇ、アンタも駆け出しなのね。」

「ああ、この前登録したばっか。」

ユーリは魔法使いの中でも攻撃よりの魔法使いらしい、一応治癒魔法も使えるらしいが、本職には劣るらしい。

「魔法の使い方教えてくれない?」

「は?別にいいけど、一日二日で使えるようなもんじゃないわよ?」

「さすがにそこまで舐めてないよ。今後のこと考えてあるに越したことはないでしょ。」

「ふーん・・・じゃ、公園に行きましょ、訓練用のスペースあるから。」

魔法の暴発がしないように訓練ができるスペースが公園にあるらしい。なんか魔法のある世界ならではの感じで面白い。

「まずは適正ね、あろうがなかろうが使えはするけど、魔力のパフォーマンスが違うわ。」

適性が強い魔法ほど少ない魔力で強力な魔法が放てるそうだ。

魔力の器官、魔力腺が開花するのは5~10歳でその時適性が高すぎるあまり近隣を破壊した事件があるらしい。そこまで適性が高すぎるのは直近500年で2例しかないらしいくらいに極々稀だそうだけど。

「魔法に必要なのは、イメージと魔法式。イメージ通りの魔法を使うために各属性の基本の魔法式から改変してそこに魔力を流し込む、そして魔法が表出される。」

そういいながら水晶のようなものを取り出して渡してくる。

「これに触ってみて。」

魔力を読み取って適性を調べてくれるらしい。

手で触れてしばらく待ってみると水晶の中の色が変わりだした。

「これは、風と火あと・・・水ね。3つもあれば上々よ。私は5つだけど。」

え?今マウントとった?

「基礎の魔法式を教えてあげる。」

そういって羊皮紙を渡してくる、そして実践してくれた。

「【ウィンド】!」

手のひらから風が発生し少し先の木が揺れる。

「あれ?思ったより威力出ないわね、まあいいわ。こんな感じよ。」

「なるほど、やってみる。【ウィンド】!」

あ、なんか出た。木が大きく揺れて葉が落ちる。

「ってうぉあっ!!」

反動でこけてしまう。痛い。

「掌に魔法陣書いてたらそうもなるわよ、体から話して魔力の繋がりで打つのよ。」

なるほど、俺は掌に直接魔法陣を作ってるのか、空に魔力を込めた魔法陣を作る練習しないとな。

「なるほど・・・」

でも今のでなんかこう、魔法の感覚つかめたかも。

確かに自分の手のひらから魔法飛ばしている人いなかったな、基本的に周りに魔法陣作って飛ばしてた。

「魔法陣を空に書くのは宮廷魔導士でも難しいわ。」

「じゃあどうしろと?」

「そのための魔法の杖やそれに準ずる触媒よ。基本的に魔力を込めるだけで魔法陣の作成を補助してくれるの。」

「触媒と魔法武器の違いは?」

「魔法の補助が触媒で、魔法が付与されていて魔力を込めるとその魔法が起動するものが魔法武器。難易度は段違いで魔法武器のほうが高いわ。」

「そうか。あ、この後時間ある?少し作戦とか立てるのに俺の取ってる宿に行こう。」

スキルなどの話は大っぴらにするもんじゃないって教えてもらったし・・・

「あんた、変なことする気じゃないでしょうね・・・」

信用のなさよ・・・いや、まあ今日会ったばっかだから当たり前だけど・・・

「いや、公共の場で手の内さらすの危ないじゃん。信用ないなら縛ってていいよ。」

えぇ、ノータイムで拘束された。

「せめて宿まで待ってくれんかね・・・」

縛られたまま引っ張られて宿まで連れて行かれた・・・俺が何したってんだ。

「で、本題だ。俺は前線でガシガシ殴りに行くけど、ユーリは魔法使いの後衛でいいんだよね?スキルとか教えてもらえるか?」

「あんたねぇ・・・スキルは冒険者にとっての生命線よ?それをやすやす・・・」

「俺のも教える。俺のスキルの特殊性もね。」

「っ!?本気なのね。」

マジもマジだよ、俺らの実力じゃ隠し事したままじゃ確実に死ぬ。

「アンタから言いなさい。それが条件よ。」

「了解。ステータスオープン。他者への表示は任意だから・・・」

お、できたできた。

「は?何よこの表示・・・」

俺のステータスのスキル欄には、

抵当

・身体強化

・魔法速射

・付与魔法適正

と表示されている。あれ?他のスキル消えてる。あ、町できいた隣の国の王女の護衛隊長の処刑と関連してるかも・・・

「なあ、最近隣国で王女の護衛隊長が処刑された話ってマジなの?」

「何よ急に、本当よ。なんでもそばに居ながら賊の人質にされてお金取られたらしいわ。」

・・・俺のせいだ。俺があんなことしたから

「はぁはぁっ・・・はぁはぁ・・・」

落ち着け、落ち着け・・・

「ちょっと!どうしたのよ!!」

大丈夫大丈夫・・・落ち着け・・・

「話してみなさいよ。何があったの?」

そこからは異世界のことを隠してすべて話した。

「なにそれ?勝手に拉致して思ったようなスキルがないから放逐しようとした?悪いの相手じゃない、何をそんな・・・」

「そっか、ありがとう。少し楽になったよ。」

「で、アンタのスキルの抵当と何の関係が?」

あくまで仮定だけど、少し確信に変わったことがある。

「多分俺のスキルで担保にしたスキルは、担保の期間中に元の持ち主が死んだらスキルは行き場を失い俺の下にとどまり続けるんだ。」

現に処刑されていない奴らのスキルは消えている。恐らく担保にできる期限は1日だ。

「そんなスキルどんな条件を・・・」

「契約時に俺が提案した条件に相手が同意すること。相手が同意のような反応を見せたときに俺が契約の成立を宣言すること。」

スキルの使い方は初めて使おうとしたときに流れ込んできた。

「・・・アンタ私と契約したわよね?」

「あ、使用する意図なかったから意味ないよ。」

「そう・・・私のスキルも教えるわ。ステータスオープン。」

えーっと・・・『魔法速射』『水利』か。

「『水利』って何できるの?」

「水を自由に扱えるのよ、雨とかだとより威力が上がるわ。」

なるほどね・・・

「基本は俺がガンガン殴りに行って、ユーリが浮いた敵を削っていく形にしようか。」

「うーん、でも基本私が大きい魔法でかく乱して浮いた敵狩るのはハルトにしましょう。」

「それもありか・・・」

確かに俺の体力考えたらユーリの案のほうがいいな。

「じゃあユーリの案で行こう。」

その後ユーリに教えてもらいながら付与魔法を使い武器に魔法を付与した。明日は試しに使ってみて明後日が本番だ。よし、寝よう。

「で、なんでいんの?」

「私の宿よりいいところじゃない。」

「それが?」

「あら?こんな美少女を警備のなってない安宿に戻らせるの?」

「はぁ、はいはい。俺椅子で寝るからベッドどうぞ。」

「さすがにそれは悪いわよ。椅子長いし私の身長なら十分寝られるわよ。」

そういうならまあ、掛布団は譲ろうか。

明かりを消し、しばらくして今の状況のやばさに気づいた・・・

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