第4話 夜市とデジタルネイチャー
夜市の狭い部屋にはベッドと小さなデスクがあるだけで、彼のシンプルな暮らしを反映していた。ただ部屋に不釣り合いな巨大なゲーミングPCだけが異彩を放っている。部屋に入ると、夜市はベッドに腰を下ろし、パソコンを開いた。その日も、現実逃避をするようにSNSを眺めていた。
そんな時、彼の目に飛び込んできたのは「デジタルネイチャー・サミット」の発表者募集の投稿だった。落合陽一によって提唱されたデジタルネイチャーは、人、物、自然、コンピュータ、データが相互に繋がり、融合することで新しい自然環境を創造する世界像である。このビジョンは、物質と仮想実体が連続的な関係に置かれ、従来の工業化社会とは異なる新たな世界観と価値を実現するものだった。
この投稿を見て夜市の心は、少し脈打った。彼自身のプロジェクトも、自然とデジタル技術の融合を目指していた。開催場所はメタバースのコミニティであるらしく、彼の目は部屋の隅にある埃を被ったVRヘッドセットに移った。彼はかつて、デジタルの世界を体験するためにこのヘッドセットを試しに使ってみたが、すぐに飽きてやめてしまった。
応募要項を確認し、彼はこのサミットで自分のプロジェクトを発表することにした。ブロックチェーンを活用した自然保護の取り組みは、デジタルネイチャーというコンセプトに近いものがあると感じたからだ。イベントのネットサイトへ移動し、サミットへの発表者応募の手続きを開始した。
このデジタルネイチャー・サミットが彼に新しい可能性を提示しているように感じられた。
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