第2話 闇の中の夜市

高層ビル群が静まり返る時間帯、夜市はオフィスの片隅でひとり、本日の成果を振り返っていた。彼の目に映るのは、ブロックチェーンを活用した森林と鳥類の保護プロジェクト。タブレットの画面には、彼が長い時間をかけて集めた情報が、未来への扉のように煌めいていた。しかし、この光は、会社の厚い壁の内側ではほとんど認識されていなかった。


オフィスからの夜景が夜市の瞳に映る。彼はこの静寂の中で、自分のプロジェクトが抱える複雑な立ち位置を思いめぐらしていた。ブロックチェーンの力を借りた自然保護の取り組みは、彼にとっては明確な道筋である一方で、周りからは夢想家の妄想として片付けられてしまうこともしばしばだった。


彼は画面に映る鳥達の姿を静かに辿る。このデジタルの世界に散らばる情報の断片から、森林や鳥たちの息吹のが感じられた。彼の心には、自然をどう守るかという明確なビジョンがあるが、それを同僚や上司にどう伝えれば理解してもらえるのか、道筋はまだ見えてこない。


オフィスの灯りを消し、夜市は静かに立ち上がる。彼の足音はオフィスのカーペットに吸い込まれる。その足音は、現状の彼のプロジェクトの様に誰の耳にも響かない。やがて夜市の姿は人混みの中へ消えていった。

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