よだかの推し ~デジタルネイチャーの絆~

空野夜靄

第1話 影の中のミコ

図書室の一番奥、薄暗い隅で、みいこは自身の影に隠れるようにして座っていた。彼女の前にはノートパソコンが開かれ、その画面上で「夜鳴ミコ」としての彼女が、バーチャル世界で華やかに踊っている。アバターは完璧で、その美しさは輝きを放ち、フォロワーたちからの称賛の声が絶えなかった。しかし、その華やかな画面の向こうで、みいこは自分の影と対峙していた。


現実世界では、彼女は自分の容姿に対する深い劣等感に押しつぶされそうになっていた。鏡に映る自分の顔は彼女にとって、失望の源でしかなかった。彼女の目には、画面上の輝かしいミコとは全く異なる、平凡で目立たない高校生が映っていた。その顔は表情を失い、教室では彼女はほとんど見過ごされる存在だった。


「夜鳴ミコ」としての自分と現実の自分との間の断絶は、彼女にとって重い鎖のように重くのしかかっていた。バーチャルでの成功は、現実世界の彼女をさらに小さく、無価値なものに感じさせていた。画面上での喝采とリアルでの孤独とのあいだで、みいこは自分がどこに立っているのか、何を求めているのかさえも見失っていた。


周囲の静けさとは裏腹に、みいこの心は騒がしかった。彼女はPCの輝く画面を見つめつつ、自分の中に広がる深い闇に思いを馳せる。バーチャルの自分が得た栄光は、現実の彼女には何の慰めにもならない。彼女はその栄光が、自分の内側の空虚を隠すための煌びやかな幻に過ぎないことを痛感していた。


そして、長い沈黙の後、彼女はノートパソコンを静かに閉じた。その瞬間、夜鳴ミコの世界は消え去り、残されたのはただのみいこだけだった。彼女は自分の心のように重いバックパックを肩にかけ、ため息と共に図書室を後にする。その足取りは重く、一歩一歩が彼女の内なる苦悩を物語っていた。

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