宇宙船の墜落
春野訪花
宇宙船の墜落
――宇宙船が墜落した。
空の果てへと飛び立とうとしていた巨大な機体。急ごしらえで作ったそれは、快適に過ごせるように箱のでかさだけを追求されて不格好なものだった。
私たちが立っている、もうすぐ沈む地上に激突した宇宙船は、激しい水しぶきを上げた。まるで雨のように頭上から降り注いで、空に虹がかかる。
炎上しながら水に沈んでいく宇宙船に、地上に取り残された人たちが歓声を上げる。
金持ちだけが乗り込んだ、金持ちのための船。海に浸食されていく大地を、貧乏人たちを、見捨てた船。それが地に落ちたのだ。
私もまた、喜んだ内の一人ではあったが――次の瞬間、もうどうあがいても助かる道はないのだと理解した。だって、あの船には数少なくなった世界中の人の中でも、優秀な人たちも乗っていたから。
宇宙船を作れる人は、もう地上にはいないのだ。
宇宙の彼方にいてくれれば、まだ希望もあったのに――。
未だに上がる歓声の中、
「……まあ、確証のない希望を持つよりはいいかもしれないな」
呟いて、燃えさかる機体を前に踊る人たちを見つめていた。
宇宙船の墜落 春野訪花 @harunohouka
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