第10話


ある日、柴田が突然、仙台へ転勤となったと言い出した。

「1年ということなんだ。どうする、君もいくかい?」まるで一人で行きたがっているような口ぶりだった。

「そうね・・・・・」彼女は考えた。「まだ子供もできないし、独身生活に戻れる最後のチャンスかもしれない」。それは柴田の胸中と一致していたのだった。結局、二人は柴田の単身赴任が1年仙台へ単身赴任をするということで、意見はあっさり一致したのだった。

1か月に1回は帰ってくるという、条件付きだったが、彼女はそんな条件はどうでもよかった。

 仙台の転勤には部下の初美も一緒だった。もう一人、若い男がいたが、柴田は、それが誰なのか、知らなかった。名前すら聞いたことがなかったのだった。


ある日、柴田は会社で初美に声をかけた。

「どうだい、仙台にもそろそろなれただろう」

「でも、一人暮らしは初めてですから」初美は、はにかむ様に言った。


彼女は新卒だった。ビキニの似合いそうな、スタイルのいい、洋画的な美人だった。

柴田が笑いながら言った。

「すぐに、いい人が見つかるよ。会社にだって、若いのがいっぱいいるじゃないか」

「結婚は、もう少し後かなと思ってます」少し照れたように初美は言った。

そんな初美を、柴田は、かわいらしくも、美しくも感じていた。



その日、初美は少し、二日酔いを感じながら、朝食をとっていた。

昨日、初美は、友人の同僚、幸子と飲みに出て行ったのだった。

初美は居酒屋で幸子が言った言葉を思い出していた。

「初美、柴田課長に、声をかけてみたら?」

幸子が言ったのだった。

「柴田課長に・・・。悪くないかもしれないな・・・。」初美は思った。

 

そして、ある日、事務所の中は、残業で残っていた、初美と柴田の二人だけだった。

それを見た初美は、「今日だ・・・」、そう思ったのだった。事務所にある段ボールあれを利用して課長と二人で倉庫に入ろう。

「そうすれば後は・・・。」初美は思った。

そして、初美は柴田に声をかけた。


「課長、すいません。事務所の段ボール運ぶの手伝ってくれませんか」

初美が切なげな声で言った。

「これから運ぶのかい?」柴田が面倒くさそうに聞いた。

「今日中にやる様に言われてるんです」初美がより切なげに言った。

柴田はやれやれと思いながら、腰を上げた。


「何所へ運ぶんだい」

「地下の倉庫です」

そして、段ボールを手分けして、二人で持ち、地下の倉庫へ向かった。

柴田は、初美が企んでいる事に気づきもしなかった。

そしてエレベータに乗り二人で地下に向かった。

初美が地下の倉庫のカギを、ガチャリと開け、二人で中に入っていった。


二人で手分けして、段ボールを所定の場所に置き

「これで終わりかい」柴田が聞くと

「いいえ、これからなんです」

初美は倉庫のドアを、閉め再びガチャリと音のするようにカギをかけた。

「何をするんだ」柴田は驚いて初美に言った。

「これからなんです、課長」


そう言って柴田を真直ぐに力強く見つめた。そのまなざしは柴田に静かに語りかけてくるようだった。

「お願い課長、私を抱いて」

初美はしっかりとした口調で言った。

柴田は驚いて何も言えなかった。彼は思った。そして迷った、確かにこの子の若さは輝いている。女性として一番輝いている時期にあるのかもしれない。


彼はそう思い、迷い、そして思った。

「簡単なことだ、抱きしめてあげればいいのだ、彼女の求めるままに。」

その時の、彼の胸中に圭子はいなかった。

そして、柴田は目をつむり、ゆっくりと彼女に近づき、彼女をあたかく抱きしめた。

柴田は言った。


「高田さん、二人だけの秘密だよ」そう言って、柴田は、彼女を力強く、抱きしめた。

彼女は、柔らかかった。その柔らかさは柴田にとって懐かしく、新鮮な、柔らかさだった。二人は激しく口づけると、無造作に衣類を脱いだ。


結局、二人は時々、外で会い、喜びを分かち合う中になったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る