第41話 信用ならないのはお世辞とダンジョンメイカー

 〜ヴィル視点〜


「ほうほう! 案外立派ですな!」

「案外ってなんだ。俺は貴族だぞ一応」


 魔王領での会議から一週間後、我が家のリフォームダンジョン化のためにアシと、テンがファンダイク領を訪問していた。


 ダンジョン化はアシ一人で可能らしいんだが信用ならないらしく監視役としてテンがついてきたらしい。


 全くどっちが君主かわからない関係だ。


「ンでは! 早速質問をば。どのようなダンジョンをご希望で? 気が乗る限り反映いたしますぞ!」

「全部反映させろ馬鹿」

「ンンンンン……魔王様がそうおっしゃるなら善処しましょう。どのようなダンジョンがお好みで?」


 そういうとアシは応接室の机に魔導書を広げる。


「ダンジョンといっても魔物が出てくるダンジョンではなくうちの兵団も戦闘を行えるようなダンジョンを頼む」

「なるほど。では館の内装、形状はそのままに中庭など広い空間もダンジョンに組み込むと致しましょう」


 アシが魔導書にすらすらとペンを走らせる。


「そこまで細かく設定できるんですね……」


 マルタが興味津々にのぞき込む。

 同じ魔導書を扱うものとして気になって仕方がないらしい。


「ええ! ダンジョンの内装から構造、はたまた出現する魔物まですべて! 吾輩の手にかかればちょちょいのチョイでございますよ。貴女もダンジョンメイク、学んでみますか? 吾輩が手取り足取り身体ごと教えてさし上げますが」

「そろそろこいつの頭吹っ飛ばしてよいじゃろ!? もう我が許可出す! 一回こいつを殺せ!」

「ンンンンンまあ殺されても復活できるんですがね! 魔物ですから!」


 もし、アシがブレヴァンの没キャラだったとしたら制作陣の英断を讃えたい。

 キャラは濃いし、面白いんだけどこいつが会話に加わるだけで一向に話が進む気配がしない……!


「話を戻すぞ。で、魔物なんだが、兵団と共闘できるような魔物が望ましい」

「共闘ですか……また珍しい注文ですね。基本的に魔物と人間の共闘は不可能ですよ? 本能的に殺し合う存在ですからね」

「でも、俺とお前やテンはこうして協力し合ってるだろ?」

「そうですねえ。ですがそれは我々が魔物の中でも上位だからでございますれば」


 さすがに難しいか……。

 兵士だけじゃ頭数が足りなさそうだから魔物入れたかったんだけどな。


「ですができないこともないですぞ」

「エリア分けするとかでしょうか。共闘はできなくとも棲み分けなら可能ですよね」

「ンンンンン! 先に言われてしまうとは! 正直むかつきますが、マルタさんの聡明さに免じて許してあげましょうかね! そうです! 階層で分断すればよろしい!」


 鼻息荒くこちらに近づいてきたアシを押し戻しながらファンダイク邸の平面図を広げた。


「魔物は魔力の流れに沿って動き回る習性がありますので、こうやって魔力の流れを作ってあげれば!」


 アシがなぞると地図上に淡く光る線が引かれていく。

 線は各部屋をつなぎ、階段に差し掛かるとまた廊下のほうへ引き返す流れを作っている。


「このような動線で魔物を動かすことができるというわけです。あとは兵士の皆さんに近づかないよう言っていただければ万事解決でしょう」

「だけど、補給で通らなければならないだろう。その場合はどうする?」


 この屋敷にはもちろんエレベーターのような階層を飛び越えるような移動手段はない。

 1階にモンスターエリアを作っても2階に作っても補給の度に通ることは必至だ。


「ンンンンン……戦闘中でないのであればダンジョン化を解除すればよろしいかと」

「できるのか?」

「ええもちろん。ダンジョンコアから流れる魔力を遮断すればいつでも元に戻せますぞ」

「そんなに簡単に?」

「そもそもダンジョンコアはただの魔力の塊で何も複雑な機構は搭載しておりません。ですので魔力の供給を止めるだけで機能を停止させることが可能なのです。ダンジョン化は魔力本来の性質を利用しているだけですしね」


 アシによると魔力とは本来、純粋な状態であれば空間を歪める機能しかないという。

 その魔力を身体というチューナーでチューニングすることで魔法が発動するという理屈らしい。


「吾輩や魔王さまの移動や収納手段はこの純粋な魔力の効力を応用したものなのですよ」

「んで、その効力で造られたのがダンジョンで、コアは純粋な魔力の供給源ってことか」

「いかにも」

「理屈はわかった。方向性も話した通りで頼む」

「魔物はどういたしましょう? 室内ですので小型モンスターがよろしいかと思いますが」

「ゴースト系で頼む。勇者あいつ、剣主体のスタイルなんだろ?」

「そうですね。基本的に勇者パーティーは物理主体の攻撃スタイルでしたね」


 なるほど、とアシはつぶやくと魔導書のページに腕を突っ込んだ。


「では、このダンジョンコアがよろしいかと。吾輩特製ゴーストマンション・ダンジョンでございます!! はい、これをボス部屋となる部屋に設置してください」


 目の前に、ゆっくりと胎動する内臓のようなものが差し出される。


「どうぞ? お手にとっても問題ありませんので」


 アシの顔が妖しく笑いかける。


「これ、コアじゃないだろおい」


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