第40話 幼馴染みとテストの点数勝負1
オレの名前は
決してイケメンというわけではないが、顔立ちは比較的整っており、高校生になって筋肉がついてきたおかげで体格は大人に近づいているような気がする。
また、髪は短く、身長はクラスの中では高い方で、手足もどちらかといえば長い方だろう。
外見はそこそこ恵まれていると言ってよいかもしれない。
そんなオレには、小学生の頃から気になっている女の子がいた。
その子の名前は
いわゆる幼馴染みの女の子。
中学生になってからは一緒に勉強することが多くなり、もともと優秀だった彼女のおかげかオレの成績はぐんぐん伸びた。勉強嫌いのオレが成績を伸ばすことができたのは、間違いなく彼女のおかげだろう。
そんな彼女と同じ高校へ行きたくて必死に受験勉強をして危なげなく合格した時の喜びは今でも覚えている。
しかも同じクラスになれたのだから言うことなしだ。
小中高と同じ学校で一緒に過ごす時間が多かったためか、オレと唯奈は今でも仲が良く、二人で登下校をしたり、テスト勉強をする関係が続いていた。
しかし、仲が良いからといって別に付き合えるわけではない。
一緒にいることが多いから、まわりからは付き合っていると思われることもあるのだが、決してそんなことはないのだ。
むしろ、どうやったら唯奈を彼女にできるのか教えてもらいたいくらいだった。
「あ~あ……唯奈と付き合いたいなぁ……」
とある平日の休み時間。
オレはそんなことをつぶやきながら机に突っ伏し、友だちと楽しそうにおしゃべりをする唯奈の姿を見つめていた。
相変わらず可愛い幼馴染みだ。
あどけない表情をしているが、端正な顔立ちで、特にぱっちりとした瞳や柔らかそうな唇には自然と惹かれてしまう。
また、さらさらの髪を片側だけ結んでサイドテールにしており、肌は瑞々しく、手足はすらりとしている。
だが、彼女の最大の魅力は何といってもスタイルの良さだろう。
もともと発育がよく、中学生の頃からその兆しは感じられたが、高校生になってからさらに成長したような気がする。
出るところは出ているし、引っ込むところは引っ込んでいて、制服越しでもスタイルの良さがわかるのだ。
おまけに普段からかなり制服を着崩していて、胸元は大胆にはだけているし、スカートも短くしている。
そんな格好の唯奈に、オレは毎日ドキドキさせられっぱなしだった。
(……あ! 山内のヤツ、唯奈の胸を見てやがったな……)
おしゃべりをする唯奈をこっそり眺めていたオレは、クラスメイトの山内が唯奈の胸を見つめていることに気がついた。
いや、山内だけではない。他にも多くの男子が唯奈に視線を送っている。
しかも、そのほとんどが性的な目で彼女のことを見ていた。
可愛くてスタイルのよい女子生徒だから仕方ないことではあるのだが……それでもあまりよい気分ではなかった。
(まぁ、別にオレの彼女ってわけじゃないから文句は言えないけど……)
そう――唯奈は幼馴染みであって彼女ではない。
だから、他の男子が性的な視線を向けていたとしても、それを非難する資格などないのだ。
唯奈のことを変な目で見るなと主張するためには彼氏になる必要がある。
しかし、今のオレでは彼氏になどなれないだろう。
実際に告白をしたわけではないが、仮に気持ちを伝えたとしてもあっさり断られてしまうと何となくわかるのだ。
そのため他の男子が唯奈のことを見ていても、気づかないふりをするしかないのである。
「いつか唯奈に釣り合う男になって、堂々と彼氏を名乗りたいなぁ……」
彼女と付き合いたいという願望を抱きつつも行動を起こす気にはなれず、オレは今日もモテる幼馴染みをこっそり見つめることしかできなかった。
◇◇◇◇◇
ある日の休日。
コンビニからの帰り道でオレは見慣れない神社を見つけて思わず立ち止まった。
広い境内に立派な鳥居や拝殿が建っているが、神主も巫女も参拝客も見当たらない。
完全に無人の神社だ。
非常に不気味だが、せっかくなので参拝していくことにする。
鳥居をくぐって境内に足を踏み入れ、参道の端を通って拝殿を目指す。
途中にある手水舎で手と口を清めてから、拝殿に向かい、賽銭箱に賽銭を投入して参拝を始めた。
願いはすでに決まっている。
オレはその願いを口にした。
「小室唯奈に釣り合う男になれますように」
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