第13話 完璧なお姉さんだと思ってた 前編
オレは
小学生までは背が低く痩せ型で頼りない見た目のオレだったが、中学に入学した頃から身長も伸びて体重も増え、少しはがっしりとした体つきになってきたような気がする。
顔つきも小学生の頃に比べれば大人っぽくなっただろう。
その証拠に、ごくたまにだが高校生に間違われることもある。まだ中学生なのに、外見だけは大人びて見えるようだ。
大人に間違われるのは決して嫌なことではない。むしろ、自分の体の成長が実感できて嬉しいくらいだ。
小学生の頃の貧相な外見がコンプレックスだっただけに、大人と思ってもらえることがこの上なく幸せなのだった。
しかし、オレの小学生時代を知らない人にその当時の外見を語ってもたいていは信じてもらえない。
体が貧相だっただけではなく、昔のオレは非常に怖がりで寂しがりやで泣き虫だったのだが、それを言ってもほとんどの人は「冗談でしょ?」と返してくる。
今のオレの見た目からでは、そんな弱々しい姿を想像できないのだろう。
だが、寂しがりやで泣き虫だったというのは紛れもない事実だ。
小学生の頃のオレはとにかく泣いてばかりで、ケガをしたり友だちとケンカしたり両親が仕事で遅くなったりする度に、いつも一人で泣きべそをかくような子どもだったのだ。
そんなオレのことを気にかけてくれたのが、隣の家に住む
彼女は、オレが小一の時に小学五年生だった。
つまり、オレより四歳年上のお姉さんだ。
小柄で手足は細く華奢な体だったが、美しい長髪が特徴的で何よりとても可愛らしい女の子だった。
オレの両親は仕事で夜遅くまで帰ってこないことの方が普通だったのだが、彼女はよくそんなオレの遊び相手になってくれた。
寂しがりやで泣き虫のオレが泣かないで済むようにするためだろう。
本当に優しい女の子だ。
おかげでオレは、両親が帰ってこなくても寂しい思いをしなくて済んだのだった。
オレたちはほとんど毎日のように一緒に遊んだ。
彼女にとっては年下の子の面倒をみていただけかもしれないが、オレは仲の良い友だちと遊んでいるように感じていた。
そんな風に多くの時間を共に過ごすうちにどんどん打ち解けてゆき、いつの間にか互いに「あき姉」、「ゆき君」と呼び合うようになる。
オレは彼女を実の姉のように思っていたし、彼女もオレのことを実の弟と思ってくれていただろう。
義理の姉弟と言ってもいいくらいオレたちは仲睦まじい関係だった。
しかし、そんな姉弟のような関係も長くは続かない。
オレが次第にあき姉のことを、姉ではなく女の子として見るようになってしまったからだ。
あき姉は本当に魅力的な女の子で、可愛いだけでなく、家事も得意だった。
小五の時点ですでに簡単な料理は作れたのだが、その後も家事の腕は上がってゆき、中学生になる頃には専業主婦顔負けの家事スキルを身につけていたのだ。
料理に洗濯、掃除に裁縫などなど何でもできる家庭的な女の子。
おまけに成績も良く、勉強でわからないところがあれば、わかりやすく教えてくれる。
そんな高スペックな美少女を好きになってしまうのは自明の理だろう。
初めは淡い恋心だったが、その恋心はオレの中でどんどん成長していたらしい。
あき姉が高校生になった時、小六のオレは分不相応にも完全に彼女に恋してしまっていた。
だが、そんな想いなど本人に伝えられるはずもない。
ずっと姉弟のように過ごしてきたから、今さら異性として意識するようになってしまったなどとは言えないのだ。
あき姉はオレのことなど弟としか思ってないだろうから、仮に告白したとしても困らせてしまうだけだろう。
何より、オレと彼女ではスペックが違い過ぎて到底釣り合わない。というか、彼女と釣り合う男なんてそうそういるとは思えない。
まさに高嶺の花だ。
手に入れることなどまず不可能だとわかっているのに一歩踏み出すなんてことはオレにはできない。
平凡なオレには、どんどんキレイになってゆく彼女を近くで見ていることくらいしか許されていないのだ。
そうして気持ちを伝えられないまま時間は過ぎてゆき、オレは中学生になった。
あき姉は高校二年生。彼氏ができていてもおかしくない年齢だ。
「あき姉……さすがにもう彼氏くらいできたよな……好きだと自覚した時点で告白していれば、オレにもワンチャンあったのかな……」
そんな風に初恋の相手への想いを募らせながら、オレは日々の生活を送っていた。
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