第6話 今後の方針を決めよう

 さて、獲得したスキルを検証してみるか。

 と言っても、試す事が出来るのは『肉体強化』と『アイテムボックス』位かな。


 さーて、俺の身体の身体能力はどれくらい上がってるのかなー。

 力が「13」。元の数値が「3」。

 単純に4倍だ。赤よりも早い。


「あ、そう言えば……」


 俺は台所に移動する。

 目の前にあるのは、冷蔵庫。

 これスゲー重たいんだよな。

 

「よいしょっ……」


 俺はおもむろに冷蔵庫を抱えて、持ち上げてみた。


「おお……全然重く感じない」


 軽々と持ち上げる事が出来た。

 くぅ、このスキルがあれば引っ越しの時にもっと楽に持ち運びできたのに。

 この冷蔵庫、ドアや外の渡り廊下をギリギリ通れるくらい無駄にデカいんだよ。

 あ、でもキャスター付きだぜ。凄いでしょ。

 ぬぁ!水垂れてきた! 冷たっ!

 俺は急いで冷蔵庫から手を離した。

 あーびちょびちょ。

 

 着替える。

 移動し、次にウチの家電で一番重い洗濯機を持ってみた。

 これも軽々……ではないけど、持つ事が出来た。

 凄いな……今までは二人がかりでやっとの重さだったのに。


 次に軽く飛び跳ねてみた。

 楽々天井に手が届いた。

 マジかよ。

 調子に乗った俺は、今度はもう少し強めに飛び跳ねた。

 ズドン。

 飛び上がり自殺になった。痛い。

 穴ガ空イタヨ。


 次にスプーンを出して、手で握ってみる。

 ぐちゃり。

 うぉぉ……エスパーもびっくりの力技や……。

 我ながら引く。


「うーん、全体的に身体能力が上がってる感じだな。こりゃ凄いわ」


 ふははは、力が溢れてきよるわー。

 なんつって。



 さて、体の性能は確かめたし、次は『アイテムボックス』を検証してみよう。

 『アイテムボックス』は、先程試したように手に持った物や触れた物を収納できる能力だ。

 まさにファンタジーの定番。

 『鑑定』と並ぶ二大双璧と言っていいだろう。

 この二つがあるかないかで、異世界のチート具合は相当違う。


 なにせ、このスキルがあるだけでハーレムを築いた小説だってあるのだ。

 約束された勝利のスキルである。多分。


 という事で、LV1でどれだけ収納できるか試してみるか。

 とりあえず片っ端から収納してみる事にした。


 その結果、着替え用の服や下着、手袋、防寒具、オフトゥン、エロ同人誌、こんにゃく(使用済み)、テーブル、洗濯機、ドッグフードなど、俺の持っている家具の殆どがアイテムボックスに収納できてしまった。

 LV1でも相当な量を収納出来るみたいだ。

 超便利。神かよ。


 やべぇ、これちょっと楽しい。

 めっちゃ非常事態だけど、このファンタジー感、たまりません。


「あ、収納したヤツのリスト作っておけば良かった……」

 

 余りにも色んなものを入れ過ぎて、何を入れたか全部覚えてない。

 そんな当たり前の事に今更ながら気付く。


≪収納したアイテムのリストを表示しますか?≫


 と思ったら、頭の中に声が響いた。

 え?リストあるの?

 はいと念じてみると、ステータス画面と同じような奴が目の前に浮かび上る。

 

「おお、収納した順に表示されてる……」


 収納した順番に上から表示されるらしい。

 しかも縦スクロール機能付き。

 複数ある物の場合は ×数 で表示されるみたいだ。


 例えばペットボトルだったら

 水500ml ×3本

 お茶2ℓ   ×1本


 といった具合に表示される。

 ちゃんと種類別だ。

 超有能。神かよ。


「これならもう何を入れたか忘れる心配はないな」


 いやースゲーわ、アイテムボックス。

 これは異世界もので、お約束にされる理由が分かるわ。


 ちなみに保存についてはどんな感じなのだろうかと思い、試しにお湯を沸かしてそれを水筒に入れて収納してみた。

 少し時間が経ってから水筒を取り出してみる。

 普通にぬるくなってた。


 うーん、保温機能とか時間停止の機能は無いのか?

 いや、LV1だし、LVが上がればもっと機能が良くなるのかもしれない。

 なんにしろ、これはすんごい便利なスキルだ。

 

 また、ある程度出し入れの際の応用は利くみたいで、手に持つように現れろと念じれば実際その通りに出てきた。

 また手に収まりきらない物に関しては、自分の目の前に現れる仕組みの様だ。


 他にも、収納する際自分の所有物であればある程度離れていても収納できるみたいだ。

 どのあたりまでが『所有物』と認められるのか微妙なところだけど、これは何度も試してみるしかないだろう。

 ちなみに収納出来る効果範囲は一メートルくらい。

 これもレベルが上がればもっと拡大されるんだろう。


 


 さて、スキルの検証はあらかた終わった。

 これからどうするかね。


 とりあえず、飯食って昼寝か?

 いやいや、現実逃避してどうする。


 未だに外からはモンスターの叫び声、そして知らない誰かの悲鳴が聞こえてくる。

 スキル『聞き耳』の影響か、以前よりも耳が良くなったおかげで、きっちりはっきり聞こえてくる。こわいよう。


 うーん、どうしたもんか。

 外に出るべきか、それともここで籠城すべきか。

 

「でも籠城するって言ったって、食い物がなぁ……」


 冷蔵庫の中には、碌な食材が残っていない。

 食パン数切れと卵、それに野菜と果物数種類に納豆、味付け肉、漬物。

 あとはカップラーメンが数個と酒のつまみ用の乾物が少し残っている程度。

 水道はまだ使えるが、もし断水すれば打つ手なしだ。

 

「あ、そうだ。とりあえず空のペットボトルにも、水入れておくか」


 資源ごみの日にまとめて捨てようと思って取っておいたペットボトルは数十本近くある。

 濯げばまだ使えるだろう。

 これに水を入れて、アイテムボックスに収納。

 もしもの時の為に、最低限の飲み水は確保しておかないと。

 収納できたのは二リットルサイズのペットボトル十二本。

 

「調味料やフライパンとかも収納しとくか。あと米も」


 電子ジャーが無くても、土鍋や飯盒使えばイケるだろうし。

 という訳で、米も収納。


「それと、食器とかも入れておくか」


 戸棚にしまっていた食器も全て収納する。

 LV1でもこんなに入る。なのに驚きの価格は1ポイント。

 さあ、今すぐ皆もアイテムボックスを手に入れよう!




「うーん、やっぱ、外に出るべきだよなぁ……」


 このままここで籠城するって手もあるけど、もしあのオークとかが乗り込んで来たら逃げ場がない。

 なにより食い物が少なすぎる。

 持って数日。その間に更にモンスターが周囲に増えてれば、詰みだ。

 なにより、電気が使えないのが痛い。

 家の中での情報収集手段が皆無なのだ。


 多少のリスクを見ても、外に出て誰かほかの人と合流するなり、情報収集するなりした方が得策だろう。

 最悪、何かあればすぐ逃げればいい。

 獲得したスキルの性能は本物だ。

 それにモンスターに比べれば地の利はこっちにある。

 逃げに徹すれば、最悪死ぬことはない筈。


「後は武器になりそうなもの……」


 といってもなー。

 こういう時に定番のバットや名状しがたいバールの様な物なんて無いし。


「……やっぱ、これしかないか」


 手に持ったのは、飯を作る時に使う包丁。

 武器になりそうなのはこれしかなかった。

 まあないものねだりをしても仕方ない。

 サスペンスでは定番の凶器。殺傷能力は優れている。

 数多の浮気者を葬ってきたある意味尤も殺しに優れた武器だ。

 それに俺が持ってる武器は包丁だけじゃないしな。


「うーん、でも包丁片手にうろつくって傍から見れば完全に不審者だな……」


 言っててもしょうがないか。

 包丁を片手に、俺は玄関の戸を開けた。


 よし、いざいかん外の世界へ。


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