第8話 職業選択


「は~~~~……」


 緊張が解けて、思わずその場に座り込む。

 怖かったなぁ、モンスター。

 引いてくれてよかったよ。

 正直、仲間がやられて敵討ちだーって来られたら逆にこっちが危なかった。


「けど何でこの剣、抜けなかったんだろ?」


 もしかして選ばれた人にしか抜けない伝説の剣とかそんななのかな?

 いや、でも骸骨の騎士が使ってたし、呪いの剣とか……?

 よく見れば血とかついて怖いし呪われそう、

 うわぁー、そうだったら逆に使えなくて良かったかも。


「みゃぅー……」


 ハルさんが膝の上に乗ってくる。


「ありがとね、ハルさん。ハルさんのおかげで助かったよ」


 剣に関してはアレだったけど、ハルさんが逃げ道を示してくれなければあの時点で危なかっただろうし。

 そういう意味ではハルさんグッジョブである。


「みゃん」


 ハルさんは膝の上で「気にすんな、当たり前のことをしただけだ」と鼻を鳴らす。

 無駄に男前な猫である。


「てか早く避難所に行かなきゃいけないけど、またモンスターに襲われたらどうしよう……」


 多分、この感じだと町中にモンスターがあふれてる可能性が高いよね。

 今も色んな叫び声や悲鳴が聞こえてくるし、このままじゃ避難所に辿り着く前にまたモンスターに襲われるかもしれない……。

 

「何か対抗手段があればいいけど……」


 少しだけ考え、私は再び、あの透明な板を目の前に出現させることにした。

 

「……ステータスオープン」



クジョウ アヤメ

LV10

HP :18/18

MP :10/10

力  :9

耐久 :7

敏捷 :9

器用 :12

魔力 :0

対魔力:0

SP :20

JP :10


職業 無し


固有スキル 検索


スキル 無し



「……突然現れたモンスター、それに経験値を獲得したってアナウンス、そしてここに表示されたレベルやステータス……」


 さっきは碌に確認もしなかったけど、もしかしたらこれがモンスターに対抗できる手段なのだろうか?

 

「消したり、出したり出来るし、もしかして触れることもできる……?」


 私は恐る恐る自分の名前やレベル、それに各項目などに指で触れてみる。


≪職業を選択してください≫


「ッ……!」


 まただ。またあのアナウンスが聞こえた。

 画面が変化し、職業の下に新たな項目が現れる。


≪以下の職業が選択可能です≫

≪市民、事務員、研究者、薬師、冒険者、剣士、聖騎士、動物使い、飼育員≫


 これは……この中から職業を選べという事?

 なんかいろいろあるわね。

 

「ゲームだとこういうのって戦うための職業とかが出るんじゃないの?」


 冒険者や剣士、聖騎士なんかはそれっぽいけど、市民や事務員って……。

 研究者や薬師……これってもしかして私が製薬会社に勤めてるから?

 現実の職業も反映されてるってこと?

 

「と、ともかく強そうなやつを選んだ方がいいよね……?」


 この中だと剣士か聖騎士だろうか?

 でも仮にそれを選んだとしても本当に戦えるの?

 あんな恐ろしいモンスターたちと。それも自分を殺そうとしてくる相手を、だ。

 ああ、考えただけで怖くなってきた。


「でも何時までもこうしては居られないし……」


 いつまたモンスターが現れるとも限らない。

 うん、そうだ。たとえ戦えないとしても、何らかの自衛手段は持っておくべき……よね?

 えーっと、強そうな職業……これかな?

 

≪職業『聖騎士』を選択します。必要なJPは1ポイントです。宜しいですか?≫


「……はい」


≪職業が聖騎士となりました≫

≪スキル『剣術』を獲得しました。スキル『纏光』を獲得しました。スキル『聖属性付与』を獲得しました。スキル『浄化』を獲得しました≫


 頭の中に響くアナウンス。

 どうやらこれで私の職業は『聖騎士』になったらしい。

 なにやらスキル? とやらも獲得したようだ。


「職業が聖騎士になってる……。それにスキルの欄も表示が増えた」


 これってスキルの説明とかないの?

 私はスキルの欄をタップする。

 

≪複数のスキルが取得可能です。取得しますか?≫


 へ? なんか他にもあるの?


≪初期獲得可能スキル一覧≫

≪肉体強化、刺突、ストレス耐性、恐怖耐性、毒耐性、麻痺耐性、ウイルス耐性、薬品生成、毒薬生成、応急処置、速筆、交渉術、番狂わせ、逃走≫


 うわぁー、なんかいっぱい出てきた。

 どれ選べばいいんだろ?

 私こういうのよく分からないんだよなぁ……。

 ゲームなんてとっくに卒業したし。

 妹やあの子なら詳しいかもだけど、今は相談できない。

 今更だけどスマホは圏外になっていた。

 通話もできないし、メールも線も使えない。


「どうにかして調べられないかなぁ……?」


 何か方法はないものか?

 あ、そういえばこの『検索』ってもしかしてそういうの調べられるやつなのかな?

 とりあえず表示された部分に触れてみる。


≪調べたい項目を入力してください≫


 ステータス画面が少し変化し、インターネットなんかでよく見る検索画面が現れた。

 しかも下の方にはキーボードのようなパネルまで現れた。

 どうやら思った通り、これでいろいろと調べられるようだ。

 時間はないけど、出来るだけいろいろ調べてみるとしよう。

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