第5話 ステータスオープンと言ってみよう

 ハルさんを抱えて走る。

 デカい木を避け、割れた地面をジャンプして乗り越え、休むことなくは私は走り続けていた。

 

「はっ、はっ、はっ……」


 それにしても何故だろう?

 さっきまで体力の限界だって思ってたのに、体が妙に軽い。

 傷の痛みも薄れてきたし、脇腹も全然痛くない。


(……私ってこんな体力あったっけ?)


 いや、ないない。

 学生時代も帰宅部上等だったし、体力がなくて風邪を引けばすぐに寝込んでしまうくらいのもやしっ子だった。

 そんな私を見て育ったからか、妹の葵ちゃんは私に似ないで超活発な元気っ子に育った。

 ……自分で言ってて悲しくなるなぁ。

 

「でも実際さっきまではもう走れないくらい疲れてたのになんでだろ……?」


 考えられる要因とすれば……さっきのアナウンス?

 レベルが上がりましたとか言っていたけど、よくよく思い出してみれば、あの後から体の調子が良くなったような気がする。


「経験値を獲得してレベルが上がって私のステータスが上昇しましたー。……なんてね」


 何を馬鹿なことを言ってるんだ。

 そんなゲームじゃあるまいし、現実にそんなことあるわけがない。

 あるわけが……。


「いや、でもそもそも現実にこんなデカい木やあんな化け物なんて居るわけないし……」


 何だろう。途端に自信がなくなってきた。

 もしかして本当に私のレベルが上がったのだろうか?

 さっきから頭の中に妙なフレーズが浮かんでいるのよね。

 それを口にすれば、『何か』が起こりそうな気がする。

 

「……ステータスオープン」


 言っちゃった。

 はは、何を言ってるんだ私。

 ないない、あり得な――



クジョウ アヤメ

LV10

HP :18/18

MP :10/10

力  :9

耐久 :7

敏捷 :9

器用 :12

魔力 :0

対魔力:0

SP :20

JP :10


職業 無し


固有スキル 検索


スキル 無し



 ……ほんとに出たよ……。

 マジでなんなのよ、この世界。

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