第12話クリーチャーのクロコ

「なんだろうこの音?」

 良平は、自分の洋服ダンスからガザガザ音が聞こえたので、ベットから立ち上がって洋服ダンスに向かって歩く。

 良平は、洋服ダンスをドキドキしながら開けると、そこには卵が孵っていた人型のワニの赤ちゃんがいた。


「ティウン」


「やっと孵ったか!」

 良平は嬉しくなって、そのワニの赤ちゃんを抱きかかえて、名前を付ける。

「おまえは、ワニだからクロコダイルの頭文字をとって今日からクロコだ。よろしくな」

「ティウン」

 この日から、クリーチーのクロコと人間の良平の奇妙な日常が始まろうする。

「見つかったらだめだからあんまり悪戯とかはするなよ」

 良平はクロコにそう言い聞かせて、部屋の中で遊ばせていた。

 クロコ自身も良平の事を、親だと思いこんで言う事を聞いた。

「ティウン。ティウン」

 近づいてきたクロコが何かを求めてきたが、それを最初は理解できなかった

「なんだろう?」

 良平は疑問に思ったが、何をしていいか分からなかった。


 良平は何をうったえているかわからないから理解しようと思い、武蔵に話を聞きに行こうとする。


「ちょっとここで暗いけど待っててな」

「ティウン」

 クロコを無理やり抱っこして、洋服ダンスに入れて隠して、武蔵の部屋に向かう。


 武蔵の部屋に着いて良平は武蔵に相談に行く。


「失礼します。突然着てすいません。少し話が合って」

「なんだ。改まって」

「あのですね。この間のワニの生態を調べたくて隊長に色々お聞きしたくて」

「勉強熱心だな」

「あ、ありがとうございます」

「わかった。じゃこの本読んどきな。頑張れよ」


 武蔵は良平にとある本を手渡す。

「ありがとうございます」

 良平は武蔵にその本を貸して貰って自分の部屋に戻る。

「待たせたな」

 良平が部屋に入ると、タンスのドアが開いていてクロコの様子がなかった。

「どこ行った?」


 良平が慌てて部屋中を探すと、まだ歩けないクロコはよちよち歩きをしてベットの下にいた。

「ふう。そこにいたか」


 良平は少し落ち着いた表情で、クロコをベットの下から呼び出して、本に書いてある通りご飯を食べさせる準備をする。

 食料は、食堂の厨房に行かないとなかった為、食堂に忍び込む。

 監視カメラに映らないように、こそここ進む。

「ばれたらやばいからな。慎重に行かないと」

 食糧庫に着いた良平は、果物を何個か部屋に持って帰ろうとする。


 自分の部屋に帰ってクロコに、食糧庫から持ってきた果物を食べさせる。

「美味いか?」

「ティウン」


 クロコは良平のほうを向いて嬉しそうに果物を食べる。

 食べている様子を見て良平は、クロコがクリーチャーと共存するために必要な一人のクリーチャと気づくと同時にただ一人の家族だと実感する。


 そして、クロコの事はばれずに一か月がたった。


 クロコは、ちゃんと立てるようになって良平の部屋で毎日遊んでいた。

 他の3人のサーバントには、クロコの事がばれてはいないが、たまに良平が食糧庫から物を盗むため、誰が盗んでいるんだろう?と言う疑問が支部内にはあった。


 そして今日も休憩中に梓と良平はその話をしていた。


「ところでさぁ。たまに食料がなくなってるらしいけど、誰が盗んでるんやろか?」

「あ、あれね。誰がやってるんだろうな」と良平は知らないふりをする。

「ほんま誰やねん。ここ住んでる人少ないから見つかるのは時間の問題って武蔵隊長が言ってたわ。貴重な食糧を持っていたやつは見つけ次第私が殴る。」

 梓の言葉を聞いて、良平はそろそろばれそうな気がして、この日から盗むのをやめた。

 そしてラウンジで食事をするのもやめ、自分の部屋で食事をとるようしようする。

 理由は、勿論自分の食事をクロコにも分けるためだ。


 そして、食事の時間。

 梓と良平はラウンジで話していた。


「最近ラウンジで食事しないけどなんでなん?」

「え、ちょっとな」

「でも不思議な事あるよな。」と梓。

「不思議な事?」

「そうそう。良平がラウンジでご飯食べなくなってからぱったりと食料泥棒がいなくなったって食堂のおばちゃんが言ってたんや。私もそれに同意やねん」

 支部に住んでいる人が少ないというのもあったが、感のいい奴がいて良平はびびる。

「そ、そうなんだ。気のせいじゃないかな。」

 良平は誤魔化す。

(こっわ)

 内心良平は怖くなる。

「それじゃあな。」

 良平は梓と別れて食事を持って部屋に戻ろうとする。

「ご飯持ってきたぞ」

 良平はご飯をクロコと食べるのだった。

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