第11話人型のワニ
「ちゃんと元気に生まれてこいよ」
良平は、毎日そんな言葉を卵にかけながら卵の孵化を楽しみにする。
「良平、夕ご飯の時間やで。早くラウンジいこ」
梓が、いつも通り勝手に良平の部屋に入ってきた。
「いつも勝手に入ってくるなって言ってるだろ。いい加減にしろ」
おどおどしながら卵を自分の後ろに隠した良平が、そう言うと梓が返事をする。
「別にええやん。隠し事とかしてるわけじゃあるまいし」
「そ、そうだけどさ」
「やろ。じゃあ別に勝手にはいって来てええな」
梓は良平を無理やり納得させる。
「とりあえず先に行っててくれ」
「わかった」
良平は後ろに隠していた卵を、洋服ダンスに隠してラウンジに向かう。
ラウンジに着くと、先に夕ご飯を食べている梓がいた。
良平はご飯をラウンジと一緒に併設されている食堂の受け取り口でカレーを貰い、梓の隣で喋りながら食べる。
「そう言えば明日、人型のワニのクリーチャー倒しに行くらしいで。こないだの熊より強そうやからちょっと心配やわ」
「そうか?今までもたくさん倒してきたし、大丈夫だろ」
「お、なんか吹っ切れたみたいやん。あんなに倒すの嫌がってたのに」
「まあな。ちょっと色々あってな」
「色々ってなんやねん。隠し事か?気になるわ」
先に来ていた梓より良平はご飯を先に食べ終わり、自分の部屋に慌てて戻る。
部屋に戻ってくると、卵がばれていなくてほっとする。
そして、次の日。
予定通り人型のワニのクリーチャーを倒しに行くことになる。
「早く支度しぃや」と梓は良平の準備を焦らせる。
「わかってるから、ちょっと待ってくれ」
良平と梓は地下にあるエレベーターの前に、先に行っていた武蔵を追いかける。
「集まったな。それじゃあ行くぞ」
梓と良平と武蔵は、エレベーターに乗って地上へ行く。
地上について、ワニが生息している住宅街に歩いて向かう。
その住宅街は、この間卵を拾った所だった。
「海の方向じゃないんですか?」と梓。
「人型は海でも生きられるが、基本的には二足歩行で地上にいるんだ」
「そうなんだ」と良平と梓は納得する。
そして住宅街に着くと、さっそく人型のワニのクリーチャーがうろちょろしていた。
「いました」良平が武蔵に言うと、武蔵は先制攻撃をしようとする。
「おりゃあああ」
槍を持ちながら武蔵は、突っ込んだ。
だが、ワニは何かを気にしている様子で武蔵の攻撃をかわせず、まともに攻撃を受ける。
「ガオオオオ」とワニは叫び声をあげる。
ワニは傷を負いながら、何かわからないが戸惑っている様子だった。
「様子がおかしくないですか?」と良平。
「様子がおかしいが、チャンスだ。いっきに攻めるぞ」と武蔵が言うと、梓は言う事を聞いて攻撃を始める。
その二人の攻撃を見て、良平はまた少し疑問に思う。
「抵抗しない相手に攻撃するのは違う。なにか訳があるはずだ」
そして、良平はワニの前に立って大剣を使って、武蔵と梓の攻撃を受け止めてはじき返した。
「なんで邪魔するねん」
「そうだぞ。クリーチャーを殲滅しないなら処分が待っているぞ」と武蔵。
「でも俺、わからないけど、何かに戸惑っている感じがするんです」
「クリーチャーが悩んでいても、敵は敵だ。敵に背中を見せるな」
武蔵は本気を出し、一瞬にして、槍の穂がついていない方で攻撃して良平を気絶させる。
「良平大丈夫か?隊長、今のはやりすぎやと思います」
「仕方ないだろ。こいつはサーバント始まって以来のサイコパスだ。何がクリーチャーとの共存だ。呆れて物も言えん。敵に背中を見せてクリーチャーを庇うなんて」
梓と武蔵は、目の前にあった家の前に良平を置いて、ワニに攻撃を開始する。
梓は後ろを向いているワニの背中に攻撃を仕掛ける。
ワニは、その場でぶっ倒れるが、まだ何かを訴えかけている様子だった。
「何だか知らないが、チャンスだ。」と武蔵はそう言って槍を脳天めがけて刺す。
血は散乱してワニは死んで捕食され、梓と武蔵は気絶した良平を連れて支部に帰った。
「ワニ!」と良平は自分のベットで目が覚める。
良平が目を覚ますと、目の前に梓がいた。
「よかった。目が覚めたんやな」
「俺。どうして、どうなったんだ」
「隊長が気絶させてずっと寝てたんやで。半日ぐっすりやったわ」
「そんなに寝てたのか。ワニはどうなったんだ」
「ワニは私たちが殺して捕食した」
「そうだったのか。」と良平は少し悲しそうな顔をする。
二人は少し話し込んで、梓は一言言い残して自分の部屋に戻ろうとした時だった。
「クリーチャーの事は一回忘れて、討伐にだけ集中しいや。じゃないと今度は死ぬで」
梓のその言葉の意味が少しわかったが、良平は理解できない。
そんな時、洋服ダンスからガサガサと音が聞こえた。
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