第9話悩みと卵



 良平はあれから色々考えて休みの日は、自分の部屋のベットで横になりながら、おでこにしわをよせて悩んでいた。


「入るで! どないしたんや。まだ悩んでるんか?」

 梓が良平の部屋に、ドカドカ入る。


「おい、勝手に入るなよ、ここは俺の部屋だぞ!」


「鍵かけてない良平が悪いよ。それに、最近の良平は荒れてるから部屋も汚いし、ゴキブリ出そうやん」


「出たらその時はこないだの薬使えばいいじゃん」


「薬に頼るのはいいけど、ちゃんと掃除しぃや。それとこないだのゴブリンとウルフ倒した時の事、まだ悩んでるんか?」


「悩んでるけど悪いか?」


「悪くはないけど、私は高い立場になれるよぅに努力するだけやから」

 梓は真面目な顔で自信満々に言うが、それを聞いた良平はふくれっつらな顔をした。

 ベットに横になって考え込んでる良平を梓は、手を引っ張って無理やり外に連れ出す。

「おい、どこ連れて行くんだよ」

 すこし暗い顔をした良平は、梓に手を引っ張られて、地下居住区にある街へ連れ出される。

「どこまで行くんだよ」


「私についてくればええから!」

 梓は、ニコニコしながら良平をうどん屋に連れて行く。

「着いたで!これが、かすうどんや!」


「うどんなんて食べても意味ないと思うんだが」

 暗い顔をしていた良平の頭の中はクエスチョンマークになった。

「どういう事だよ。うどんって」


「うどん食べたら温かくなるから気持ちもほっとするで」


 言葉の意味が良平はわからなかったが、かすうどんを一口食べると言わんとすることが少しわかった気がする。

「どうや!」

「美味いよ」

「それは良かったわ」

 梓は、笑顔で嬉しそうに良平の食べている姿を見ていた。


「あのさ。私、クリーチャー倒すのに躊躇するなら一回休み貰ってもいいと思うんや。支部長なら多分理解あるし」

「そうかな。わかった」

 良平はその言葉を信じてかすうどんを食べてから支部に戻る。


 梓は自分の部屋に戻り、良平は支部長室に行く。

 梓は良平に一言声をかける。

「勇気いるやろうけど頑張りや」

「ありがとうな」

 そして、支部長室について良平は支部長の政宗に言う。

「あの、この間言いましたが、俺はクリーチャーと共存できると思います。だから俺はそれに向かって頑張ります」

 良平は、休むと言おうと思ったが、どうしても言いたいことがあって聞く。

「そうか。別に夢を持つことはいい事だが、世の中はそんなに甘くないぞ。俺はクリーチャーとは共存できないと思っているが、ある意味お前の意見は新しくていいかもしれないと少し思うんだ」と真剣な顔で政宗が言うと、良平が少し嬉しそうな顔をした。

「ありがとうございました」

 良平は、肯定された気分がして、嬉しそうな顔をしたまま一時休暇を言い忘れて自分の部屋に戻る。


 次の日、良平と梓と武蔵は地上の瓦礫市にある破壊されたあとの住宅街に来た。

「最近はクリーチャーがおとなしくていいな。あと、お前クリーチャーと共存したいらしいな」と武蔵が良平に聞くと、良平は少し照れながらぶっきらぼう感じで答える。

「まあそうですけど、できるかわかりませんが、頑張ろうかと」


「できねえよ。俺の友達もそんなこと言ってたけど、結局殺されたし」

 その言葉を聞いて良平は、悲しい気持ちになると同時に、自分と似た人がいたんだな。と思い、その人の代わりに頑張ろうと思った。


「その人が生きていれば気が合ってたかもしれないですね。その人の分まで頑張りたいです」

 良平のまっすぐな言葉に武蔵は死んだ友達の姿を見た気がした。

「あんまり無茶はするなよ」

「はい。ところでなんでクリーチャーはいったい何なんですか」と真剣な顔をした良平は武蔵に聞く。

「クリーチャーはいわゆる生物兵器だ。性別があって。産卵もするから繁殖もする。だから厄介なんだ。しかも政府は、クリーチャーという生物兵器を檻に閉じ込めて実験を繰り返していたらしい。その時の事をクリーチャーはいまだに恨んでるみたいだぞ。自分から攻撃してこない奴もいるが、基本的にはむこうから攻撃してくるから気をつけろよ 」

「根が深いな。これからどうしよう。俺頑張れるかな」

 と良平は内心そう思いながらも頑張ろうと思った。


 住宅街を探索していると、良平は大きな卵を見つける。

「俺しんどくなったので先に帰ってもいいですか。ここまで来るのに、5分くらいでしたし」

 良平が嘘をついて、帰ろうとした。

「そうか。なら一旦帰っていいぞ」と武蔵。

「ありがとうございます」

 良平は卵を持っていたリュックに隠して住宅街を後にする。

 その卵が後々に良平の運命を変えるのだろうか? それはまだ誰もわからない。

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