第8話良平の悩み。そしてファイアードラゴン

 


 イタチのクリーチャーを倒してから数日が過ぎ、良平達はあれからも数体クリーチャーを倒して、抗戦的でないクリーチャーもいたため違和感を感じていた。

「失礼します」

 良平は支部長室に入る。

「良平か? 急にどうしたんだ?」

 支部長の政宗は良平を心配する。

「クリーチャーと共存できると思いませんか?」と唐突に良平は政宗に言う。

「そんなの無理だ。お前の理想論は通らない」と政宗。

「なんでそんな事言うんですか?」

 良平は、少し不安な顔をした。

「絶対無理だな。俺の経験上あいつらは害のない時もあるが、人間を恨んでいるからな。それにこないだのガチョウだってお前たちの獲物を勝手に持って行っただろ」

「まあそうですが、あれはちゃんと捕食できなかった俺達が悪い所もあるし」と良平。

「あーいうずるがしこい奴もいるから気をつけろよ。人間は言葉が通じるが、あいつらは都合のいい時だけしか伝わらないから、かなり厄介だ。その事だけ覚えておけ」

 政宗は良平にそう言い聞かせて、支部長室を後にさせた。

「やっぱり無理なのかな」

 少し自信を無くしたが、正直な気持ちは共存できるようにしてやるぞ!という感じだった。


「支部長室に行ってなんかあったんか」と梓。

「いや、何でもないけどちょっとな」

「なんか怪しいなぁ~。教えてや」と梓は良平に聞くが、良平はそれ以上言わずに自分の部屋に戻ろうとする。

「ちょっとまちぃや」

 良平は梓の声を振り切って、そのまま自分の部屋に戻ろうとした。

「結局なんやったんや。もやもやするわ」と梓は疑問に思ってもやもやしたが、気にしないようにする。

 そんな時だった。休憩する暇もなく支部長から連絡が入る。


「ベビードラゴンを引き連れて、行動している渡りドラゴンを討伐してくれ。話を聞くだけじゃ怖くないが、あいつらは渡り鳥みたいに移動しながらいろんな種族に囲ってもらって人間に危害を加えてくる厄介な奴らだ」

 良平達は、さっそく渡りドラゴンの元に車で向かう。

「俺は後で行くから先に行っててくれ」と武蔵。


 そして、瓦礫市の街のど真ん中に向かった。

「ガオオオオ」

 その渡りドラゴンの種族は炎。つまりファイアードラゴンだ。ファイアードラゴンの周りには、ベビードラゴンも複数体いてファイアードラゴンが守っている感じだった。


 そして、その周りには別の住処にいたゴブリンや人間型のウルフがドラゴンを守っていた。

「今回は厄介やな」

「本当に倒していいのか?」と良平は思い、躊躇する。

 すると、一匹のゴブリンがスキをみて良平を襲ってくる。

 良平はそれを大剣で受け止める。

「くそ、こっちは悩んでるっていうの、に躊躇なく攻撃してきてやがる」

「今日の良平はスキありすぎやで。しっかりしなあかんで」

「お、おう」と良平は悩みながらも返事をする。

 逆に梓はこないだのメスゴブリンの事を忘れたかのように、双剣でウルフをぶった切る。


 ウルフは格闘タイプで攻撃をうまくかわす。

「こいつなかなかやるやん」

 梓はいつも以上に本気で双剣を早く振り回して使いまわすが、全ての攻撃をかわされた。

「そして、ウルフのパンチが梓に当たった。

「うああああああ」

 パンチが当たった梓は吹き飛ばされる。

 ウルフはガッツポーズをする。

 それを見ていて、危ないと思いさすがの良平は助けに入ろうとするが、ゴブリンに足止めされる。


「しかたないか。」と良平はそう思い、本気を仕方なく出すがまだ心残りがあった。

 ゴブリンを大剣でぶったぎろうと、するがすばしっこくなかなか当たらない。

「くそっ」

 良平が諦めそうになると、吹っ飛ばされた梓が声をかける。

「何悩んでるか知らんけど、ちゃんと戦えや」

「わかってるけどさ。悪くない時もあるのにクリーチャーが不憫で」と良平。

「そんな事か。そんな事は後で高い地位についてから考えろ。私はそう決めた」と梓が言うと、良平は少し納得して少し吹っ切れる。

「すまんな。もう少し待っててくれ」とゴブリンにそう言って、良平はゴブリンを叩ききる。


 梓は立ちあがり態勢を整えなおして、双剣でまたウルフに攻める。

 ウルフは、梓の攻撃に集中して、良平に気づかなかった。

 良平はウルフの横側から攻撃する。

 見事当たるが、腕を怪我しながらも大剣を受け止めた。


「強すぎやわ」と梓。

「そうだな。でもやるしかないんだ」

 腕を負傷しているウルフのスキをついて梓が攻撃する。

 負傷していたこともあり、その場でウルフは倒れる。

 少し泣きながら良平はウルフを攻撃して倒した。

 そして座ってベビードラゴンを守っていたファイアードラゴンが立ち上がる。

 空を飛んで空中戦に持ち込んできて、対応しきれなかった。


「くそ、どうしたらええねん」

「今は仕方ない。倒すしかないんだ。」

 良平達は空中から特攻攻撃しながら、炎を吹いてきたのに対して、大剣でガードするしか手がなかった。

 そんな時だった。


「待たせたな」

 武蔵はミサイルのようなものを持って後から現れた。

「なんですかそれ」

「なんやそれ」

 良平と梓が声を合わせて武蔵に聞く。


「これは新兵器竜撃砲だ。このミサイルで空中戦にも対応できるようになる」

「政府はまたすごいもんつくったな」

 梓がすごそうに驚き、武蔵は攻撃を体制に入ろうとする。

「それじゃあぶっ放すぞ」

「ちょっと待ってください」

 良平が動揺する。

「なんだよ」と武蔵。

「あの、俺、悩んでて」

「何に悩んでるか知らないが、クリーチャーは敵だ。スキを見せるな。」


 武蔵は良平を説得したが、良平の内心は倒さないといけないがでも倒したくないという気持ちでぐちゃぐちゃになった。

 良平の言葉を無視して、武蔵は竜撃砲を突撃して向かってくるファイアードラゴンに当てる。

 一発目は外したが、2発目はベビードラゴンに向けると庇ったファイアードラゴンが胸にダメージを受ける。


「ギャオオオオン」

 ファイアードラゴンの急所に攻撃が当たり倒れた。

「こいつ打たれ弱いな。」と武蔵。

 良平と梓はそれを見て少し心苦しくなる。

 それを見て梓と良平は目をつぶるしかなかった。

 そして、武蔵はまたベビードラゴンを狙う。

 ファイアードラゴンはベビードラゴンを守れず、攻撃を受けて倒れる。

「今だ! やれ」と武蔵が命令する。

 嫌だったが、二人は命令を聞き少し悲しみながら攻撃して、ファイアードラゴンは討伐されるのだった。


 支部に帰る途中武蔵に梓と良平に聞く。

「なんでそんな簡単にクリーチャー殺せるんですか?」

「俺は仲間を昔殺されて恨んでるんだ。それだけだ」

 それを聞いて武蔵の話に二人は納得する。

 色々考えたが、梓と良平の二人の気持ちはまだ納得しきれないのだった。

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