第3話






 時は流れ──・・・女四の宮は十四歳になった。


 物語では母后が故人となっていたのだが、女四の宮による食事の改善と娘を見習い外に出て身体を鍛えた事で健康になった彼女は生きているのだ。


 娘と同レベルの強さを手に入れた母后は女四の宮を守る為、桐壺の更衣に生き写しの女四の宮を強く望む桐壺帝の願いを肉体言語で拒否する日々を送っている。


 しかし寄る年波には勝てないのか、女四の宮が十七歳になった春に母后は身罷ってしまったのだ。


 五歳年下の光源氏は元服を迎えて左大臣家に婿入りしている。


 つまり光源氏は成人しているので御簾越しで話すという事だ。


 兄はあれだから頼りにならないという事もあるが、物語では紫の上と呼ばれる少女を自分の子供として引き取る為にもここは桐壺帝に取り入った方がいいだろうと判断を下した女四の宮は、その年の夏に入内。藤壺を賜った。


 以後、女四の宮は【藤壺の女御】【藤壺の宮】と呼ばれる事になる。


 彼女が某世紀末救世主のような強者である事を知らない桐壺帝は、見た目は桐壺の更衣のような超美人で優しく接する藤壺の女御を溺愛しているのだが、後宮の女達は勿論だが殿上人達もそれに対して何も言わないでいる。


 それは藤壺の女御が先帝の第四皇女だからだ。


 母親に瓜二つの美女で優しい気性だと評判の藤壺の宮が気になってしまった光源氏は、彼女に対する下心を隠しつつ母を慕う子供の思いを綴った文を送る。



 こいつ・・・帝の妃にこんな文を送っていいと思っているのか?



 母に対する思慕という名の自分の対する欲情を綴った恋文を桐壺帝に見せた藤壺の宮は『源氏の君が怖い!間違いなく私は源氏の君からエロ同人誌のような目に遭わされてしまう!!』と訴えるのだが、自分が唯一愛した女性が産んだ息子にはとことん甘い。


 それこそカスタードクリームとホイップクリームを乗せたパンケーキにチョコレートソース、メープルシロップと蜂蜜、黒糖と粉糖を塗したくらいに甘い桐壺帝は『藤壺、そなたの考えすぎだ。あの子は幼い頃に母親を失った事で母の愛に飢えている。母として源氏の君を愛して欲しい』と、藤壺の宮にそう言ったのだ。


 あかん!!!


 物語でも桐壺帝は光源氏にだけは親バカだったが、自分の妻の一人に手を出そうとしている息子に対してそのような事を言い出すなんて夢にも思っていなかった藤壺の宮は頭を抱えた。


(どうすれば、光源氏が脳と下半身が直結している男だと分かって貰えるのだろうか?・・・・・・そうだ!)


 藤壺の宮にいい考えが浮かんだ。


 源氏の君が自分に手を出そうとするところを桐壺帝に目撃させ、フルボッコにすればいいのだ。


「帝の仰せの通りに・・・」


 桐壺帝の言葉に藤壺の宮は承知したと頭を下げる。









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