第41話 クレインの危機
地域動物医療ネットワークを正式認可を受け、王都に分院も作ることができた。
分院の方は1ヶ月に一度は視察に行くことになる。
基本的には、院長と室長に業務は任せて報告を受ける形になるだろう。
「では、私はオーランドに戻ります」
「分かりました。こっちのことは任せてください」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
そう言って、ラースは王都を後にしようとしていた。
次に来るのは、また1ヶ月後になるだろう。
両親にも挨拶を済ませて来た。
オーランド家の馬車に乗り、王都を出発する。
比較的、順調に進んで行く。
護衛の騎士たちも居るのでこのペースなら予定通りにオーランドへ到着することだろう。
♢
翌日の夕方、ラースはオーランドに到着した。
予定通りの到着である。
「ただいま戻りました」
ラースは辺境伯のお屋敷へと戻った。
「ラースさん、戻って来てくれたか!!」
バーロン辺境伯が血相を変えてラースの元へ走って来た。
「どうされたんですか? そんなに慌てて」
「クレインが、クレインが……」
「バーロンさん、落ち着いて話てください」
「すまない」
ラースはバーロンの背中に手を置いて呼吸を落ち着かせる。
「何があったんですか?」
「クレインが重症なんだ。魔獣の討伐から帰って来たと思ったら、相当な深傷を追ったみたいなんだ」
「何ですって!? クレインさんは今、どこに?」
「自室で寝かせている」
「私も診ます」
ラースはクレインの寝室へと向かう。
「これは、酷い……」
クレインの状態はかなり深刻なものだった。
上半身には包帯が巻かれている。
「この処置は誰が?」
「私の知り合いの医者だが、そいつは治癒系の魔法が使えなくてな」
医者としては、適切な処置がされている。
しかし、クレインは苦しそうに表情を歪めている。
「熱もかなりありますね。このままでは危険ですね。でも、クレインさん程の方がただの魔物にやらてたんですか?」
クレインの剣の腕はラースも知っている。
その腕は王都でも十分に通用するほどである。
それほどの腕を持っているクレインが簡単に魔物にやられるだろうか。
「それが、報告には無かった災害級の魔物が出たらしい」
「なるほど……」
災害級の魔物は本来、数十人の冒険者や騎士たちでやっと討伐できるものである。
それなら、クレインでもこれほどの深傷を負うかもしれない。
「とにかく治療します」
災害級の魔物はまだ解明されていないことが多い。
その魔獣にやられたなら、毒物や魔獣の体液などで汚染されている可能性もある。
《医療魔法・再生》
ラースは医療魔法を展開する。
「嘘でしょ……」
しかし、傷は塞がらない。
回復スピードが追いついていないのだ。
「ラースさんの魔法でもだめなのか……」
しかし、このまま放置したらそれこそ死の危険がある。
「まだ手はあります。バーロンさん、私の身にもしものことがあったらお願いします」
「何をするつもりだね?」
《医療魔法・自己犠牲》
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