第40話 動物医療ネットワーク

王都の大学病院や王立病院、高度な専門獣医が在籍病院と街の開業医を繋ぐシステム。

それが、地域動物医療ネットワークである。


「さすが、新会長。やはり、ベルベットさんの意思を継ぐお方だ」


 副会長が言った。


「そうですね。あの方はいつも我々には思い付かないようなアイディアを持って来られていましたもんね」


 他の役員たちも興味を示してくれた。


「しかし、ラースさんそれを実現するにはかなり大変な作業になるのではないかね? 開業医は国にたくさん居るわけですから」


 地域動物医療ネットワークに参加してもらうためには、各町の開業医さんたちに納得してもらい正式に加盟してもらう必要がある。

それには、大変な時間がかかると思われる。


「そこは、すでに考えてあります。我が、ラースクリニックは王都に分院を作ることにしました。そこに、地域動物医療連携室を併設し、まずは王都からこのシステムを確立したいと思っています」


 この地域動物医療ネットワークを思いついたとき、すでに陛下に相談して王都でのラースクリニック分院開業の許可はもらっている。

辺境伯からも特に反対意見は出なかった。


「必要な人材も既に確保しています。入ってください」


 ラースの声で、会議室の扉が開き、2名の男性が入って来た。


「ラースクリニック分院院長には、デリク・マッキンレイ氏にお願いしました。私の学生時代の恩師でもあります」


 デリク先生は、元王立動物病院の副院長だった人だ。

この話をした時、引退してからは地域に密着した医療をしたいと快諾してくれた。

ラースが獣医学生をしてた時に、色々と教えてくれた恩師でもある。


「老い先短い身ですが、どうぞよろしく」


「そして、地域動物医療連携室の室長にはみなさんもご存知とは思いますが、リル・ヒネン氏に就任してもらうことにしました」


 リル氏は元獣医師協会の副会長を務めた方である。

獣医師会初の女性役員であった。


「この歳になってまた新しいことができると思うと、ワクワクします。なので、この話をお受けすることにしました」


 リル氏は、今は王都で開業医をしている。

そのため、街の開業医さんたちとは太いパイプがあるので、適任だと思ったのだ。


「お二人が協力してくれるなら、こんなに心強いことは無い。議長、お願いします」

「分かりました。では、ラース会長の提案に賛成の方は挙手願います」


 議長の発言に、役員たちは全員挙手をしてくれた。


「では、ラース会長の地域動物医療ネットワークの導入を可決いたします」


 こうして、地域動物医療ネットワークは正式に稼働し始めるのであった。


 

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