第14話 ジェシカと調理実習
「さぁ、美味しく作るわよ!」
今日は、家庭科の授業の調理実習で、皆でケーキを作る。
今日、私の班と一緒の友達のジェシカは、誰よりもはしゃいでいる。
「そうだね。頑張ろう!」
これからケーキを作るので材料を見ようとした。
かなりの量の材料が積まれていた。
「え...この材料、全部使うの?」
「当たり前じゃない」
ジェシカは、これぐらい材料を使うのが当たり前みたいな顔をしている。
「が、頑張ろ〜...」
ひやひやしながらも、私はジェシカと一緒に調理を始めた。
あまりにも材料が沢山あるので若干スピードを速めながら、調理していく。
「エリムちゃんのとこ、凄いね?」
「どんなケーキができるんだろう?」
周りがガヤついていた。
そりゃあ、材料からしてどうなるかは、気になってしまうだろう。
「ぜぇ...ぜぇ...できた...」
なんとか、ケーキが出来上がった。
かなり巨大だ。
「お〜」
周りの生徒たちから拍手喝采が起こった。
「食べましょう。エリム」
「うん...」
この巨大なケーキを作るだけでも、かなり体力を消耗したので、かなりお腹が空いている。
今ならこのサイズのケーキも余裕で食べられる自信がある。
けれど、班で作ったので分けて食べる。
「はい。エリム、あーん」
「あーん…」
ジェシカが、ケーキを私の口に運んでくる。
絶対これはジェシカならやると思った。
「美味しい?」
「美味しいよ。ジェシカと班の皆で作ったんだし、頑張った甲斐があったな〜って味する」
「それは良かったわ!どんどん食べて!」
「うん…」
ジェシカはそう言いながら、バクバクとケーキを食べている。
ジェシカの大食いは元からなので、班の皆どころか、生徒誰1人気にしていない。
「あの…エリム、ちょっといいですか?」
「シャロリア?」
別の班にいるシャロリアが私に話しかけてきた。
「私の班もケーキを作りました。エリム、良ければ食べてください」
「シャロリアのとこ?食べる〜」
シャロリアがケーキを見せてくれた。
「これは…」
なんか綺麗なオーラが漂っていた。
「じゃあ」
私が食べようとした。
が、ここで。
「エリム、こっちを向いてください」
「何?」
シャロリアに声をかけられたので振り向く。
「はい。あーん…」
何故か、シャロリアが私の口にケーキを運ばせようとする。
多分、先程のジェシカが私にしてたのを見てたのだろう。
「あーん…」
せっかくシャロリアの班の皆が作ったんだし、シャロリアの喜ぶ姿も見たいので口にケーキを入れる。
「美味しいですか?」
「美味しいよっ!」
なんか…お上品な味がする。
「ちょっとエリム!どこ行くのよ?」
「ごめんジェシカ…」
ジェシカが私の方に来る。
「あらジェシカ?エリムと何か?」
シャロリアが私の方に来たジェシカに話しかける。
「何よ!さっきからあーんとかして良い雰囲気出しちゃって!」
「エリムと良い雰囲気出されてジェシカが困ることは…?」
「そ。それは…」
「言えませんか?」
「言えるわよ!」
何やら喧嘩が始まりそうになってしまった。
これは私がきっかけで起きてしまっている。
なので、私がどうにかしたい。
「落ち着いて!私は、どっちの味も好きだから…2人とも喧嘩しないで」
「まぁ…エリムが言うなら。ごめんなさいね」
「えぇ…こちらこそすみません」
なんとか2人は喧嘩せずに落ち着いてくれた。
「エリムさん、私の班のも食べてください」
「エリムちゃ〜ん。私の班のも食べて〜」
「え!?」
何故か私のところに女子が沢山ケーキを持ってきた。
どうしてこう私は女子ばかりにモテてしまうのか?
最近は嬉しくなってきたから良いけど。
「分かったから…じゃあ順番に並んでね?」
「うんっ!」
私が前に出ると女子の皆は列を作ってくれる。
私目当てでこんな行列ができるのは初めてだ。
「私ってば…凄い人?」
何かしらの凄い人のサイン会をしている気分で私は、女子の皆が作ってくれたケーキを食べていった。
「ふぅ。なんか凄い食べた気がする…」
調理実習が終わり、片付けをする。
そして、授業が全部終わり鞄を持つ。
「エリム、今日一緒に帰らない?」
ジェシカから一緒に下校を誘われる。
「いいよ。帰ろっか」
鞄を持ちながら、私とジェシカは外に出た。
「ジェシカ…なんか帰るルート違うよ?」
ジェシカの様子がなんだかおかしい。
「ジェシカ…?」
先程からジェシカが喋っていない。
明らかにいつもの明るいジェシカじゃない。
「ここどこ…?」
全く人気がない森の中まで連れて来られた。
「モンスター出ない?ちょっとまずいよ…」
森にはモンスターが出る可能性が高い。
モンスターが仮に出たとしても私の魔法でなんとかなるのでそこは問題ないが、それよりもジェシカが、わざわざここまで連れてきた理由が気になる。
そう考えているとジェシカがいきなり私の方を向き。
「エリム…」
「ジェシ…カ…?」
私を押し倒してきた。
「ごめん…ちょっとエリムを独り占めさせて…私…ちょっと寂しかったのよ…エリムが皆に囲まれて…遠くに行っちゃうんじゃないかって…」
「ジェシカ…」
ジェシカが泣きそうになりながら、理由を教えてくれた。
「ジェシカ…大丈夫だよ。教えてくれてありがとう。私はここにいるし、今ジェシカとこうやってお話できてる。私、もっとジェシカのこと知りたいよ。これからもずっと友達でいよう?」
「エリム…」
ジェシカは私を抱きしめてきた。
「ありがとう…私、幸せよ…」
「ジェシカ…」
森の中で抱きしめ合う。
これを機に、またジェシカの新しい一面が知れた気がした。
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