第12話 ベルリスと見回り

 私、エリム

今日もフロンティア学園の授業が終わったので帰る。


 いつもは友達のジェシカと帰っているんだけど今日はジェシカは、友達のミリと一緒に帰るみたいなので私1人だ。


「文房具買って帰ろうかな...」


 新しいペンが出たらしいので文房具屋で文房具を買って帰ろうとしたら、知っている人物に遭遇した。


「おぉ。エリムか?」


「あれ?ベルリス?ここで何をしていたの?」


「見回りだ。街の安全を守るのは騎士の役目だ」


 友達の女騎士のベルリスだ。

以前、ベルリスがハイパースネイクというモンスターに捕まっていたところを私が助けたことがきっかけで、仲良くなった。


「私も一緒に見回りしよっか?まだ明るいし、イリスもそんなに心配しないだろうからさ」


「良いのか?では、一緒に見回ろう」


 ベルリスは偶にツッコミたくなる行動を起こす。

けれど、一緒にいて楽しいしベルリスのことをもっと知りたいので良い機会だと思い、一緒に行動を決めた。


「あれは!?」


 ベルリスが何かを見つけた。


「風船引っかかっちゃったよー!」


 木に風船が引っかかってしまっている。

多分、木の下で泣いている女の子の風船だろう。


「私が取ろう。木登りは得意だ」


 ベルリスが女の子にそう告げる。


「ありがとう!」


 そしてベルリスは木に登る。


「大丈夫?私、魔法で取れるよ」


「大丈夫だ。私が取る」


 どうやらベルリスは自分で風船を取って女の子にかっこいいところを見せたいらしい。

ベルリスらしいな。


「取れたぞ!」


「やったー!」


 無事にベルリスは風船を取れて、女の子は喜ぶ


 だが


「なっ!」


 ベルリスの防具が木に引っかかってしまう。


「離せ!」


 慌てたベルリスは木に引っかかりながら、暴れる。


「ベルリス!落ち着いて!」


「くっ、殺せ!」


 ベルリスは慌てたままなので、このままでは怪我をしてしまいそうだったから、私は杖を持った。


「ベルリス!」


 風魔法を使い、ベルリスと風船を下に移動させる。


「ふぅ...助かった」


「お姉ちゃん!ありがとう!」


 ベルリスと私は女の子にお礼を言われた。


「お姉ちゃん、2人とも...とってもお似合いだね!」


「そ、そ、そ、そうか!?」


「ありがとう」


 ベルリスは顔真っ赤にして照れている。

分かりやすい。


「またねっ!」


 女の子は風船を持ってどこかに行った。


「お似合いか!?」


「唐突だね!?うーん...どうかな?」


 私とベルリス、他人からはそう見えていたのだろうか?

しかし、ベルリスが焦ってしまっているので落ち着かせようと、私はこう答える。


「まだ会ってそんなに経ってないし、これから色んな思い出を作っていって、そこからどんどん本当のお似合いに近づいていくのって...どうかな?まだ誰が好きとかハッキリしてないでしょ?お互いにね」


「そうか...思い出作りが必要か...」


「そうそう」


 私が話したら、ベルリスは落ち着いてくれた。


「ては、今から一緒に色々な場所を見回りながら思い出を作っていこう」


「いいね」


 で、そこでベルリスのお腹が鳴った。


「は、はぅ...」


「お腹空いたんだね...」


「何か食べに行こう。途中、好きな所で昼食を取っていい話になっている」


「じゃあ、2人で食べれそうなところに行こっか」


「あぁ」


 そして、私とベルリスはレストランに入った。


「それ...全部、食べるの?」


「あぁ。エリムも食うか?」


 ベルリスは巨大なパンや、段になっているパフェを頼んだ。

友達のジェシカもかなり食べるが、ベルリスも同じくらい食べるらしい。


「遠慮するよ。私は自分が頼んだのだけでいいかな」


「そうか」


 ベルリスは皿に盛られている料理をたくさん口にしながら私と食事した。


 会計を終えた後、街のあらゆる場所を一緒に見回ったが、今日は平和だった。

毎日、平和が続いてほしいと願う。


「今日は感謝する。お陰で楽しい見回りになった」


「いいよ。私も楽しかったし」


「最後に夜景を見ていかないか?気に入ってる場所がある」


「え?行きたい!」


 最後に夜景を見るなんて、ロマンチック。

まるでデートみたいだ。


「こっちだ。ついて来い」


「はーい」


 私はジェシカについて行く。


「わぁ...これ、凄い!」


「そうだろう?」


 着いた場所はフロンティア学園の近くにある展望台だった。


 夜景がよく見え、街全体が見渡せれる。


「私は...昔、エリムと同じフロンティア学園の生徒だった」


「そうだったの?」


 ベルリスは騎士の学校とか卒業して騎士になってたかと思ってたら、違った。

まさかの私が今通ってるフロンティア学園の卒業生だった。


「あぁ…だが、私は魔法を使うのが苦手で勉強も苦手だった。今でもそこには自信がない」


「そうだったんだ…」


 言われてみれば、ベルリスが杖を持って魔法を使ってるところを見たことがない。


「授業も上手くいかなくて落ち込んだ日は、ここで夜景を見ていた。騎士になった今でも、こうして見にくる。ここで景色を見ていると…自然と落ち着き、明日もまた頑張れる気がする」


 ベルリスはフロンティア学園にいた頃の話をしてくれた。

いると元気が出る場所。ベルリスにとってそれがこの展望台なのだろう。


「そんな思い出のある場所だったんだね。私もここ、好きになりそう」


「そうだろう?いつでも来るといい」


「ベルリスも一緒!ね?」


「嬉しい…あぁ。また来よう」


 そうすると大きな音が鳴った。


「あ、花火!」


「そういえば今日は打ち上がる日だった…」


 私とベルリスは花火を見ている。


「花火…綺麗だな」


「そうだね…」


 そして私はベルリスに寄り添う。


「ベルリス、綺麗だね」


 ベルリスの目を見て言う。


「な!?」


「ベルリスは騎士としてかっこいいし、お姉さんみたいな感じもするから憧れちゃうし、顔も可愛いから、全部含めてベルリスは綺麗だな〜」


 花火が打ち上がるテンポと同時にベルリスのいいところを褒める。


「エリムは…誰かの良いところを見つけるのが得意なんだな。素敵だ。今、エリムに褒められてとても嬉しかった。私の場合、騎士をやっていて1番嬉しいのが、誰かに褒めてもらえる。だからな」


「ベルリス…そんなに嬉しかったんだ」


 誰かの良いところを見つけたことはあるが、こうして伝えると喜んでくれるなら、もっと良いところを見つけてみよう。

そう決めた。


「もし、いつか誰かと結婚するなら…エリムみたいな者と結婚したい」


「も〜ベルリスだったら〜」


 私はベルリスの肩を指で少し、触れる。


「エリムは…どんな者と結婚したい?」


「私は…内緒っ!」


「そうか…まぁ、エリムらしい」


 ベルリスは寄り添っていた私に抱きついた。


 私はベルリスの頭をそっと撫でた。

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