第11話 ジェシカと体育祭

「今年の体育祭はリレーです。皆さん、頑張ってください」


 私はエリム、このフロンティア学園の生徒だ。

今年の体育祭はリレーをするみたいで生徒たちも気合が入っている。


「リレー…テンション上がるわね!あのバトルを受け取る瞬間…そして走る爽快感がたまらないのよね〜」


「そ、そうなんだね…」


 今、私と会話しているのが友達のジェシカ

何やらリレーが好きみたいなのではしゃいでいる。


「チームできているみたいだよ」


「どれどれ…」


 表を確認する。

私が最初。アンカーがジェシカだ。


「私がアンカーね!」


「ジェシカ、足速いしアンカー向いてるよ!」


「いやいや〜それ程でも…あるわ!」


 ジェシカは体育の授業でも足の速さが活かされている。

なので、リレーのアンカーとなると勝てそうだ。


「私の前は誰よ?」


 ジェシカが前のランナーを確認する。

ミリという名前の女子生徒だった。


「あんまり話したことないわね…」


「これを機に仲良くなってみたら?」


「そうね。顔は分かるから話しかけてみるわ」


 ジェリカはミリの席まで行く。


「貴方がミリね?私はジェシカよ。よろしく。リレー、頑張りましょうね」


「…」


 ミリは何も喋らなかった。


「ちょ、聞こえてる?」


「…」


 ジェシカが話しかけてもミリは喋らない。


「ジェシカ、話しかけても意味ないんじゃ…?」


「いや、話しかけるわよ。前のアンカーはリレーにとって大事な存在なのよ!」


「ちょっと落ち着いて!」


 ジェシカが少し感情的になってきてしまっているので私がここで話に入る。


「…」


 ミリは無言で立ち上がり、その場から離れようとする。


「ちょっと待ちなさいよ!」


 ジェシカはミリの腕を掴む。


「ひっ…」


 ミリが怯えてしまっている。

このままではギスギスした空気のまま、体育祭を迎えることになってしまうので、慌てて私はジェシカに声をかけた。


「エリム…」


「ミリ、怖がってるよ。リレーは大事なのは分かるけど…それよりもまず最初に分かり合あおう?そうじゃなきゃ、話にならないって」


「エリムがそう言うなら…」


 ジェシカはミリに掴んでいた手を離す。


「ごめんなさい。ちょっと感情的になってしまっていたわ」


「…うん。こっちこそ…ごめん」


 やっとミリが喋りだした。


「それで、どうしてさっきは喋ってすらくれなかったのよ?」


「…怖いから」


「え?」


「リレーが…怖いから…」


「どういうことよ?」


「私…足が遅くて徒競走とかではいつも最下位で…徒競走と違ってリレーだとバトンで繋いで走るから私のせいで最下位にならないかどうかが怖くて…せっかくジェシカちゃんは速いのに勿体ないよ…私のせいで…」


 ミリがどうしてリレーが怖いのかを素直に話してくれた。

確かに徒競走とリレーは違うのでミリの言い分もよく分かる。


「そう…足が遅いから…じゃあ、私と練習する?速くなるコツ、教えてあげるわよ」


「いいの…?」


「当たり前じゃない。これから一緒に走る仲間なのよ?これくらいはしてあげるわ」


「ありがとう…ジェシカちゃん…」


 ミリとジェシカは一緒に走る練習をするらしい。

一先ず、落ち着いて良かったよ。


「エリムもよ」


「私も!?」


「えぇ。最初に走るんだし、かっこよく走ってみせなさいっ!」


「うん…」


 そうして、私とジェシカとミリの走る練習が始まった。


「このペースよ!」


「うん!」


「いいよっ」


 3人で走る。

正直、走るのはこの体が慣れているので問題ない。


 寧ろ、ジェシカと一緒に走れているので、この練習は楽しい。


「休憩するわよ!」


 ジェシカが一旦足を止めて休憩を取る。

私とミリもそれに続く。


「ほら、沢山食べなさい!」


「ありがとう…」


 案の定、ジェシカは巨大なおにぎりを沢山出す。

これ全部食べきれる食べれるのは、ジェシカぐらいではないか?


「はむっ!はむっ!」


 と、思っていたらミリも巨大なおにぎりを沢山食べている。


「ミリ〜よく食べるわね!」


「えへへ…ジェシカちゃんとエリムちゃんと一緒に食べれるのが嬉しくってつい…」


 最初、ギスギスしそうになっていた2人だったが、今こうして仲良くできているので見ていて微笑ましい。


「もうすぐ本番ね…」


「そうだね…大丈夫かな?」


「ミリなら大丈夫よ。安心しなさい」


 ジェシカがミリの頭を撫でる。

私も本番、頑張ろう。


 そして迎えた本番当日


「いよいよね。エリム、ミリ…2人とも、準備はいい?」


「いいよ!」


「私も…いいよ!」


 遂にリレーが始まる。

最初は私から走る。


「お願いっ!」


 そして私は次のランナーにバトンを渡す。


「後はミリ…ジェシカ…お願い!」


 もうすぐミリにバトンが渡される番だ。


 しかし、ミリの様子がおかしい。


「あれってもしかして…?」


 ミリが固まってしまっている。

間違いない…これは。


 緊張していて固まってしまっている。


「え、どうするの!?」


 自分の番ではないけれど同じ仲間なのでミリになった気持ちで焦ってしまう。


「どうしよう…どうしよう…」


 3人で走る練習頑張ったからミリにはその成果を発揮してほしい。

けれど、どうすればいい?


 そう悩んでいたところに、まさかの。


「ミリ!ここでバトンを受け取って走れたら好きな子に告白したら成功しやすくなるわよ!頑張りなさい!」


 ジェシカが大声でミリに向かって叫ぶ。

恐らく、ジェシカが適当に考えた嘘だろうが、ミリは動いてくれるだろうか?


「う…うん!」


 ミリはジェシカの言葉がきっかけで固まりが解けて、バトンを受け取る。


 そのまま、ミリは走り出す。


「いっけー!ミリ!」


「がんばれー!」


 私だけではなく、周りにいる大勢の人がミリを応援する。

どうやら、3人で走る練習をしていたのが密かに噂になっていたらしいからだ。


「もうちょっとよ!ミリ!」


「ジェシカちゃんっ…受け取って!」


 ミリはジェシカにバトンを渡す。


「受け取ったわ。さぁ…走るわよ!」


 ジェシカは全力疾走でゴールまで走る。


「ジェシカ頑張れ!」


「ジェシカちゃん!」


 ジェシカは、声援を受けてゴールする。


「やったわ!」


「ジェシカー!」


 ジェシカが勝ったので生徒全員でジェシカを胴上げする。


「ちょっと!もうっ…嬉しいわ〜」


 その後、ジェシカは巨大なお弁当箱を持って食事を取り始める。

私とミリも含めて3人で食事を始めた。


「いや〜よくやったわね!ミリ!すっごくかっこよかったわよ!」


「ありがとうジェシカちゃん…頑張って走ったし、この後、告白するね…」


「えぇ…」


「ミリ…」


 この流れだともしかしたらミリはジェシカに告白するのだろうか?


「カミラちゃんに!」


 違った。


「告白、頑張りなさい!今のミリならきっと告白成功すると想うわ」


「ありがとう…ジェシカちゃん!」


 やっぱりジェシカは色んな生徒と仲良くできるいい子だな。


「ジェシカは好きな子いるの?」


 せっかくなのでここで私も恋に関する話をジェシカに聞いてみる。


「いるけど…まだ私には告白する自信がないわ。だからミリが羨ましいわよ。エリムは?」


「私は〜誰だろ〜?」


「も〜」


 走って食べて笑って思い出に残る楽しい体育祭になった。

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