第4話
待つ事暫く
「聖女アネットよ、今宵はサタナスを倒した二人の英雄を祝う宴だ。主役であるそなた達の為に用意した衣装は王宮に用意してある」
今すぐ王宮へと向かうが良い
リリスと取り巻き達によるアネットの断罪という名の茶番劇が繰り広げられていた教会にやって来たのは王国の統治者である国王と衛兵達、教会の頂点に立つ教皇、そして彼女と共にサタナスを討ち取ったヴァンパイアハンターであるオデッセイアだった。
「恐れ入りますが、国王陛下。私、アネット=アンダーソン・・・いえ、アネット=シュナイダーは今宵の宴に参加する事が不可能となりました」
アネットが国王にカーテシーをした後、リリス公爵令嬢に対する嫌がらせの実行犯として王太子のメフィストを中心とする貴族子息達に国外追放の沙汰を下されてしまった事を話した。
「妻が国外追放になるのであれば夫である私も共にするのが道理。互いに信頼し合い、同じ道を歩むのが夫婦というもの。陛下、私はアネットと共に国を出て行きます」
「ですが、国を出て行く前に一つだけお願いがございます。国王陛下、サタナスの首と死体をリリス様達に披露してもよろしいでしょうか?」
自分達の身の潔白を証明したいと、アネットが国王に願い出る。
「父上!何故、こんな悪女を庇うのですか!?この女は平民の分際で聖女を騙り私が愛するリリスを殺そうとしただけではなく、サタナスを倒したと父上達を騙しているのです!!」
「メフィスト!余と教皇の命令でオデッセイアと共に一年以上も前からダークネス城にサタナス討伐へと向かっていたアネット嬢がリリス嬢に対してそのような嫌がらせが出来るはずがなかろうが!!」
それに、お前にはアネット嬢のみならず他人を裁く権限と権利などないわ!!!
「そ、そんな!私は王太子なのですよ!それに・・・先程から申し上げているようにリリスは聖女を騙るアネットに何度も命を狙われていたのです!」
「では、尋ねよう。アネット嬢がリリス嬢の命を狙っていたという証拠を出してみよ!」
「本人と我等の証言こそが、聖女を騙る卑しいアネットが愛しいリリスを虐めていた証拠になります!!」
(この馬鹿息子が!!)
オデッセイアとアネットがダークネス城に向かう道中で、オークやコカトリス、ワイバーンやドラゴンといったモンスターを狩り、それ等を冒険者ギルドに卸して換金したり、立ち寄った村や町が襲われていたら(金目的で)モンスターを倒していたのだ。
二人が死と隣り合わせの旅をしている間、メフィスト達はリリスと色に耽る日々を送っていた事を【影】から報告を受けていた国王は、今の一言で第一王子を捨てて第二王子を王太子に立てる事を決意する。
乳房と乳首だけではなく、クロッチの部分に穴が開いているランジェリーが透けて見えるドレスを纏っている痴女の色香に惑わされたメフィストと息子の側近になる筈だった青年達に国王は頭を抱えるが、ここはアネットが言っていたようにサタナスの死体を見せれば息子達も自分が犯した罪の重さを自覚できるだろう。
「聖女アネットよ。あ奴等にそなた達が倒したサタナスを見せてやるがよい」
オデッセイア=シュナイダー。アネット=シュナイダー。今宵の祝宴でそなた達二人には男爵位ではなく子爵位を授けるし、メフィストが言い渡したという国外追放も取り消す!
それだけではなく、今回の冤罪事件に関わった家からアネット嬢に相場の倍以上の慰謝料を支払う事を国王の名を以て約束する!だから、王国に残ってくれぬか?!
一国の王が頭を下げるのは国の権威に関わるので、国王は二人に対して頭を下げていない。
だが、地位と金を提示する事で国王は、オデッセイアとアネットを王国へ引き留めようとしていた。
最強のヴァンパイアハンターとして名高いシュナイダー家の男と、前衛で戦える聖魔法の使い手を輩出してきたアンダーソン家の女が王国から出て行くというのは国にとって大きな痛手なのだ。
ましてや、オデッセイアとアネットは吸血鬼の恐怖から世界を救った英雄である。
そんな二人を、リリス嬢に対する嫌がらせという冤罪で国から追い出してしまったらどうなるか──・・・。
王家は民にそっぽを向かれ、近隣諸国は英雄に対する仕打ちを広める事で王国を追い詰めると同時に、二人を自国に招き入れるだろう。
「国王陛下、私とアネットは爵位を望んでおりません。その代わりと言っては何ですが、我等が行動しやすいように色々と便宜を図って頂きたいのです」
そんな事でシュナイダーとアンダーソン両家を王国に留めておけるのなら易いものだと考えた国王は、自分が目にしたサタナスの首と死体を披露する事を許可するのだった。
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