第3話






(こいつ等・・・アホ?馬鹿?いえ、違うわね。これは・・・そう。脳内お花畑って奴だわ)


「リリス様、メフィスト様、バルバトス様、アザゼル様、ベリアル様、よろしいでしょうか?」


 それまで彼等の主張を黙って聞いていたアネットが口を開く。


「言っておきますけど、私がリリス様に対して・・・去年の夏に階段から突き落とそうとした、去年の冬に池に突き落として凍死させようとした、去年の秋に魔物を操って殺そうとした、去年の春のお茶会では紅茶に毒を盛った──・・・数々の所業についてですが、それは不可能です」


 何故なら、私は国王陛下と教皇猊下の依頼を受けて、一年以上も前からオデッセイアと共に吸血鬼の真祖であるサタナスを倒しにダークネス城へと向かっていましたもの


「「「「「は?」」」」」


 アネットの言葉に五人は間の抜けた声を上げて驚く。


「この事は国王陛下と教皇猊下のみならず王妃殿下に第二王子殿下、宰相閣下に近衛騎士団長・・・国の上層部であれば周知の事実でございます」


 こんなのが国王や宰相になってしまったら、この国は終わりだな・・・つーか、こいつ等終わったなと心の中で五人に対して愚痴を零しながらも、アネットは淡々と事実を告げる。


「それに今夜は王宮でオデッセイアと私の戦勝を祝うパーティーが催されますし、まだ昼間だというのに市井の酒場は宴会のように賑わっているみたいですよ」


「か、隠しキャラのサタナス様が倒れされた・・・?嘘!嘘!そんなの嘘に決まっているわ!!」


「本当ですよ。その証となるサタナスの首は、オデッセイアが国王陛下と教皇猊下に報告がてら披露している最中です」


 もうすぐすれば、オデッセイア達が教会に来るはずですわ


 その時にサタナスの死体と首を皆様にお見せいたしましょうか?


 アネットの言っている事は嘘だと思いたい。


 だが、何時になく早鐘のように打っている心臓が彼女の言葉は真実だと告げているような気がしてならないリリスは、国王と教皇が現れるのを待つ事にした。






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