第15話 釣り合う女の子がいい

「定、みっけ・・・・・・」


 数秒後、女の子の胸の柔らかさを感じる。定は突然の事態に、頭は真っ白になった。


「とってもあったかい・・・・・・」


 深呼吸をしたあと、無謀なことをした女の子に視線を送る。


「ま、松田さん・・・・・・」


 松田さんと呼んだために、彼女は不機嫌になった。


「う・た・ひ・め・・・・・・だよ。何度いったら、わかってくれるのかな」


 男づきあいの好きな女を好きになり、極端に自己主張の強い女から好かれる。どちらと交際しても、幸せになれるとは思えなかった。


 第三の女を探したいけど、学校内で見つけるのは難しい。恋人を作るためには、他校から探す必要がある。


 空からはにわか雪が舞った。積雪のない地域では、非常に珍しい光景といえる。


「定、雪が降ってきたよ」


「そうだな・・・・・・」


 手に積もった雪は、あっという間に解けていく。人間の恋愛感情さながらの、儚さを感じることとなった。


「涼子に対する想いは、今もすごく強いんだね」


「それはさっき消えた・・・・・・」


「それなら・・・・・・」


「ごめん、そんな気分になれない」


 歌姫は体をゆっくりと離した。


「私のことはどうしても、好きになれないみたいだね」


 定は首を縦に振った。


「松田さんは雲の上の存在なんだ。恋愛対象というよりは、憧れに近い存在といえる」


 平凡な人は、平凡な人と付き合うのが一番いい。背伸びをしようとすれば、自分をじわじわと苦しめていくだけ。


 定の二つの黒目に、地味な女の子を捉える。容姿は数段劣っているけど、傍にいられるだけで落ち着けるような気がした。

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