第14話 想い人の考え方

 クリスマスの時期を迎えた。


 空からはにわか雪が降っている。白い結晶は、交際しているカップルを引き立てていた。


 偽告白を仕掛けた男は、クリスマスをぼっちで迎える。九カ月以上のときを経ても、悪い噂の呪縛から解き放たれることはなさそうだ。


 定は横断歩道で、想い人の姿を捉える。満面の笑みを浮かべながら、一人の男と手をつないでおり、デートしていることが伝わってくる。


 涼子の破局を期待するも、見事に裏切られた。彼女が一人身になるのは、いつになるのだろうか。


 横断歩道を渡ろうとするとき、涼子に声をかけられた。


「新谷君、こんばんは・・・・・・」


「島本さん、こんばんは・・・・・・」

 

 涼子とあいさつしたからか、彼氏からガンを飛ばされることとなった。定は恐怖を感じ、視界を右にそらした。


「涼子、お友達なのか?」


「学校のクラスメイトだよ。話をするのは、一カ月に一度くらいといったところ」


 同じクラスなのに、会話する機会は異様に少ない。恋愛の神様によって、好きな人と疎遠になるように仕組まれている。


「異性と親しくするのはやめてくれよ。他の男と話すたびに、浮気するのかとドキドキするよ」


 涼子は異性の友達が多い。彼氏にとって、大きな不安材料になりうる。


「交際を始めても、いろいろな男と親しくしたいよ。一人だけに束縛されるなんて絶対に嫌だもん」


 彼女の話を聞いて、背筋に寒気を感じた。冬の冷たさではなく、涼子から感じるものである。


「荒谷君、じゃあね」


「島本さん、じゃあね」


 一年以上も思い続けていたものがすべて、空に弾ける音が聞こえる。涼子を知らなかったからこそ、彼女のことを好きでいられたのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る