第11話 彼氏に襲われそうになる(歌姫編)

「あなたとはもういられない。すぐに別れて・・・・・・」


 男に別れ話をした直後、態度が一変することとなった。


「歌姫さん、そんなことできると思っているの。一度交際したからには、墓場まで一緒に行くのは義務だ」


 男は狂気じみた視線を、こちらに向けてきた。歌姫は恐怖でなにも発することができなかった。


「おまえは何も考えずに、俺に黙ってついてくればいいんだ」


「助けて」と叫んだ直後、定がこちらを通りかかった。


「おまえ、何をしているんだ」


「歌姫さんと楽しくしているんだ。そんなこともわからないのか」

 

 定は男に対して、挑発するような視線を送った。


「そんなふうには見えないけどな・・・・・・」


 歌姫は声をふりしぼった。


「拉致されそうになっているの。すぐに助けて・・・・・・」


 定はいつにもなく、強い口調で男を避難した。


「クラスメイトを拉致するなんて、いい度胸をしているな」


 男はここにおいても、自分勝手さを発揮する。


「うるさい。彼氏なんだから、何をしてもいいんだよ」

 

 彼は鞄の中から包丁を取り出すと、定に襲い掛かった。急所は外れるも、左腕に包丁が刺さった。


「ぎゃあああああ」


 事件になったことで、周囲の人間も異変を感じ取った。包丁を持っている男を一斉におさえつけにかかる。男は抵抗できず、すぐに取り押さえられた。


「はなせ。こんなことをしてタダですむと思っているのか」


 定の腕からは、大量の血が流れていた。すぐに止めなければ、出血多量で死ぬかもしれない。自分のせいで人が死ぬかもと思うと、いてもたってもいられなくなった。

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