第7話 関係解消を伝える
定は交友関係を解消したことを、市橋健司に打ち明ける。
「そんなやりかたをしたなら、同情は一ミリもできないな。おまえがすべて悪い」
「それはそうだけど・・・・・・」
健司は下唇をなめる。
「今回のやり方は、すでに学校に広まっているはずだ。高校を卒業するまで、交際につなげるのは厳しいことを覚悟しておけ」
高校を卒業するまで、彼女なしの生活を送る。華のない生活は、退屈なものになりそうだ。
「歌姫さんにドッキリを仕掛けるなんて、すさまじい男だな。学校一の美人でなくても、ガチ告白に決まっているだろ」
「真剣にいったところで、取り合ってもらえるとは思えないだろ。適当にやったほうが、傷は小さくて済む」
健司は大きな溜息をついた。
「本気でいっているのだとすれば、人間性を疑うレベルだぞ。精神病院にガチでいったほうがいい」
「そ、そうか・・・・・・」
「あいつと長くいたために、脳を完全に毒されてしまったみたいだな。正常な状態に戻るまで、一カ月、二カ月はかかりそうだ」
「そんなにひどいのか?」
「ああ。救いようのないレベルだ」
定、健司のところに、沖野明がやってきた。トラックを走ったばかりということもあって、大量の汗をかいていた。
「明、噂は聞いているか?」
明は水色のハンカチで汗をぬぐった。
「ああ。歌姫さんに、ドッキリ告白をしたことだろ。学校中で知らないものは、誰もいないと思うぞ」
定の偽告白は、学校中に広まっている。転校しない限り、肩身の狭い生活を送ることになる。
「女性に偽告白は失礼だとは思わなかったのか。歌姫さんでなかったとしても、深い傷を負うのは確実だ」
「そ、それは・・・・・・」
「正樹とは完全に縁を切れ。おまえが正気に戻るための、唯一の方法といっていい」
正樹にはたくさんの恩を受ける。彼と縁を切るのは、こちらとしてはやりたくなかった。
「俺たちにいえるのはそれだけだ。縁を切る、関係を続けるのかはお前次第だ」
健司、明はトラックに向かっていく。定はその様子を静かに見守っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます