第5話 交友関係解消

 定、歌姫は屋上にやってくる。


 屋上には他には誰もおらず、二人きりの時間を過ごすことになりそうだ。歌姫に興味を持っている男からすれば、天国さながらの環境といえる。


 定は何の感情も沸いていなかった。歌姫に対しては、地球に存在している女という認識を持っているのみ。


 定の頬は冷たい風にさらされる。

  

「寒いな・・・・・・」


「そうだね・・・・・・」


 歌姫は冷たい視線を、こちらに向けてきた。これまでとは別人だったので、全身に身震いをおぼえた。


「君はもう用済みだよ。私には近倫一切、関わらないようにしてね」


 定は「用済み」の言葉を棒読みする。


「偽告白をしたときから、どんなふうにいためつけてやろうかと考えていたんだ。女心を傷つけようとした男には、ぴったりなやり方でしょう」


 偽告白をした男を、再起不能になるように叩き潰す。彼女は告白をしたときから、そのように決めていた。 


「偽の告白をする男なんて、誰が親しくなりたいと思う。そんなこともわからないようだったら、君に彼女は一生できないね」


 歌姫はこちらを振り返ることなく、屋上をあとにする。定は完全に縁が切れたのを察した。


 一人ぼっちにされたあと、手作りの弁当を見つめる。冷たくなっているのか、おいしそうには感じなかった。

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