第4話 歌姫が近づいてくる

 偽の告白をしてから、二日目を迎えようとしていた。

 

 弁当箱を開けようとしていると、学校一の美人が近づいてくる。


「定、一緒に弁当を食べよう」


 歌姫に呼び捨てされたことで、教室内はざわざわとなった。


「凡人がどうして、学校一のアイドルに呼び捨てされているんだ」


「歌姫さんの興味を持っている男って・・・・・・」


「それはない。月とすっぽん、天と地ほどの差がある」


 歌姫は最上級クラス、定は平凡クラス。ひいき目に見ても、釣り合う部分はなかった。


 定は想い人である、島本涼子に視線を送ってみる。彼女は気づいていないのか、こちらに目を向けることはなかった。


 涼子は三年生の男と交際中。関係がこじれない限り、こちらにチャンスは巡ってくることはない。キャンセル待ちというのは、いかにもつらい。


 歌姫はノリノリなのか、カッターシャツの裾を引っ張ってきた。


「定、屋上に早くいこうよ」


「歌姫、テンションが高すぎる」


 歌姫、定のところに、正樹がやってきた。


「二人は親しくなったのか・・・・・・」


 歌姫は大きく頷いた。 


「恋人にならなかったけど、親友になることにしたんだ。ゆくゆくは・・・・・・」


 意味深な発言に対して、まさかという思いが芽生えていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る