悪魔に愛された少女④

 琴子は駅前の噴水で親友のかれんと待ち合わせをしていた。少し寒いので自動販売機でホットのレモンティーを二つ購入すると待ち合わせ場所に急いだ。

 何故なら琴子の嫌な予感は当たっていた。一人で座っているかれんに話しかける男二人組。

 

「かれん! 待った?」

 

 琴子の顔を見るとかれんはぱっと明るい表情を見せて立ち上がる。今まで話しかけていた男達を振りほどき琴子の元へ駆け寄る。

 

「琴子、来てくれたんだ?」

「あたりまえじゃない」

 

 そう、琴子とかれんが話しているところに先ほどの男二人組が寄ってくる。そして二人の進行方向を塞いだ。

 

「丁度二対二になったしどっか行こうよ」

「大丈夫です、今から私達帰るので......」

「いいじゃん遊ぼうよ!」

 

 琴子の腕を掴んだ男に、かれんは言った。

 

「私の琴子に触らないで!」

 

 かれんの言葉と共に男達二人は突然倒れる。気絶しているのか泡を吹いていた。その様子を見て琴子は驚きはしたが、逃げるチャンスだとかれんの手を引いてその場を離れた。

 公園のベンチに座ると、先ほど購入したレモンティーをかれんの頬にぴたっとつけた。

 

「あったかい」

「私の奢りだよ」

「へへっ、ありがとう」

 

二人してしばらく缶の紅茶で温まる。かれんは妙にもじもじと顔を紅潮させて、しおらしく琴子にこう言う。


「御剣先生に何かされなかった? 大丈夫?」

「うん、絶乃さん。優しいよ」

「絶乃……さん? なんでそんな風な呼び方なの? 琴子の一番なの? ねぇ、ねぇ! なんで? かれんじゃないの? 琴子の一番はかれんだよね!」

 

 かれんは綺麗な顔を醜くゆがめて琴子につめよる。かれんはあの港で襲ってきている男と変わらない恐怖を琴子に与えていた。

 

「やめて、かれんお願い……痛いよ」

 

 かれんは琴子を掴む力を緩めない。琴子が痛みに悲鳴を上げた時、歌声が響いた。

 

「こんなこっといいなぁ~できたらいいなぁ~、あんなゆめこんなゆめ一杯あるけどぉ~」

 

 そこにはどてらを着た絶乃の姿があった、コンビニにでも行っていたのだろうか? ビニール袋を片手に持って口にはスルメイカを咥えていた。

 

「絶乃さん!」

 

 琴子がそう叫ぶと絶乃は振り返り、はてなという顔をして頭をかしげて見せた。

 

「ボクはゼノえもんだよ。未来から来た鬼型ロボット。スルメイカ大好き。お金次第で助けてあげるよ」

 

 国民的猫型ロボットのフリをしてそういう絶乃に琴子は泣きそうになりながら助けを求めた。

 

「絶乃さん、お願い。かれんを助けて」

「高くつくよ?」

「一緒に払うよ」

 

 絶乃は無理やりかれんの掴む腕を引きはがし、琴子にどてらを羽織らせる。そしてビニール袋を渡した。


「それボクの夜食だから死守してね」

 

 そう言い残すと絶乃はかれんの元へゆっくりと歩く。そして後ろポケットに入れている大きなハンドガンをすっと当然の如く抜いた。

 それでどうするのか?

 答えは簡単だ。

 あの銃で港にいる男同様にかれんを撃ち殺すのだ。それを確信すると琴子は絶乃にしがみついた。

 

「絶乃さん、殺さないで、かれんは……私の親友だから」

「親友は殺しちゃダメなんだ? あの男はぶっ殺してもなんも思わないのに、えらく君は傲慢なんだねぇ? 琴子君」

 

 絶乃は冷たい視線を琴子に見せる。そんな琴子にかれんが叫んだ。

 

「琴子、ごめんね! 痛かったよね? こっちに来てやっぱりそんな奴信用しちゃダメだよ! ねぇ、私の手をとって」

 

 そう言って手を伸ばすかれん。

 琴子は普通の表情に戻りそう言っているかれんに心が揺れる。絶乃は銃を握ってはいるが向けてはいない。

 

「琴子君。ボクに任せておけばあの子も救ってあげる。でも、ボクの言う事を聞かなければ君もあのかれんも多分良い結末にはならないと思うよ? ボクを信じるか、親友を信じるか選びなよ」

 

 琴子は懇願するようなかれん、そして冷たい視線で突き放す絶乃、この二人を見て琴子は絶乃に聞いた。

 

「かれんを殺さないで助けれるんですか?」

「さぁ、どうだろうね。でも少なからずあの状態からは救ってあげれるよ」

 

 琴子は絶乃から離れかれんの近くへ行く。それにかれんは心から嬉しそうな顔を見せ手を伸ばした。

 

「かれん、少し痛いかもしれないけど、助けてあげるからね? 絶乃さん、お願いします」

 

 琴子に裏切られた。

 それにかれんは弱弱しく笑う。そして震える。

 

「どうして? 御剣先生に何か弱みを握られているの? そうだよね? じゃなきゃかれんを琴子が裏切るわけないもん!」

 

 琴子は首を横に振った。それにかれんは涙を一筋流す。その怒りの矛先は絶乃、睨み付けてかれんは叫んだ。

 

「消えてなくなれっ!」

 

 かれんの言葉と共に、絶乃の身体から血が噴き出る。

 

「絶乃さん!」

「あー大丈夫。ゼノえもんは頑丈だから、しかしサイキックとかいう奴かなこれは、凄い痛いぞ」

 

 ぷらんぷらんと変な方向に曲がっている腕を見て絶乃は嬉しそうに嗤った。足の骨もむき出しになり明らかに大丈夫な状態ではない。されど立ち上がる絶乃。

 

「さて、かれん君だったかな? 君から獣臭がすると思ったけど、一体何を飼っているんだい? ボクに見せてごらんよ」

 

 絶乃に対してかれんは怒り狂って叫ぶ。

 

「なんで死なないの? ありったけの力を込めたのに! どうして? 契約違反じゃないの? アストロ!」

 

 かれんの隣に大きな白いヒヒの様な何かが現れた。それはゆっくりと歩み寄り、大きな腕を振りかぶる。どうやらその恐ろしい姿は琴子にも見えていたようで、声も出せず恐怖で腰が抜けていた。

 

「これが獣臭の正体か」

 

 ガッ!


 ヒヒの大きな拳は絶乃の頭を地面にめり込ませる。確実に頭蓋が割れる音と共に赤い血の海が出来上がった。

 

「琴子、邪魔者は殺したから、これ、かれんのペット、アストロ。可愛いでしょ? 悪魔なんだって」

 

 そう言って照れた表情をするかれん、琴子は一体かれんが何を言っているのか、全く理解できなかった。

 

「悪魔って……何?」

 

 震える琴子に狂気じみた笑顔を見せ、かれんは両手を広げて告白した。

 

「私ね。華奈が邪魔だったの。華奈がいなければ琴子は私にだけ笑いかけてくれるから! だから目安箱にお願いしたの。華奈を消してくださいって! そしたらね! この子が来てくれたの、アストロで華奈を叩いたら、華奈動かなくなっちゃった! きゃははは!」

 

 琴子はかれんを睨み付ける。

 

「待って、華奈が意識不明になったのって、かれんのせいなの?」

「うん、邪魔だったの。かれんは琴子が大好き。琴子はかれんの事だけ見ていればいいの」

「私を呪ったのもかれんなの?」

 

 琴子のその言葉にかれんは焦る。

 

「何それ? 違うよ? 琴子をかれんが呪うわけないじゃない。誰かに呪われているのね? 殺してあげる。アストロで殺して……」

「もうやめて! かれんがそんな事言っちゃヤダよ!」

 

 泣きじゃくる琴子にかれんは笑いながらゆっくりと近づく。真っ白な恐ろしいヒヒと共にゆっくり、ゆっくりと。

 かれんの手と共にヒヒも腕を伸ばす。

 

 ズガン!

 

 かれんの真横でヒヒがどす黒い血を流し苦しんでいる。何が起きたのかと振り向くと、そこには無傷の絶乃の姿があった。

 

「絶乃……さん」

 

 絶乃は持っていた大きな銃を再びヒヒに向けて引き金を引いた。その破壊力はゴリラのように大きなヒヒの肩を一撃で吹き飛ばす。

 

「その猿。悪魔だっけ? それじゃあボクは殺れないよ。だからボクを呪おうと思ったのかな?」

 

 かれんを見下すように言う絶乃にかれんは激昂する。苦しんでいるアストロに向かって絶乃を殺すように指示を出す。

 

「そんな事しないわ。貴方は私が殺す。何をやっているのアストロ! ちゃんと殺しなさい!」

 

 痛みに苦しみながらアストロは絶乃に襲い掛かる。大きな腕で再び絶乃を殴る。だが、その腕は絶乃に止められ、その腕に向けて大型ハンドガンをゼロ距離発射。

 

「痛いかい? 悪魔、君は弱いねぇ」

 

 絶乃は怯え逃げようとするアストロの頭に銃口を向け、引き金を引いた。

 耳をつくような断末魔を上げるアストロ、それと同時にかれんも失禁し、そのまま意識を失う。

 

「かれん!」

「あー、大丈夫だよ。契約している悪魔を無理やりボクがはぎ取ったから、その負荷に耐えられなかったんだろ? しかし、この子が君を呪った張本人だと思ってたんだけど、違ったね」


 倒れたかれんは絶乃のマンションに運び介抱した。琴子は朝方までかれんを看ていたので、絶乃は自分の寝室に戻っていく。あくびをしながら、夜食を持って行くその姿は数時間前まで血だらけで死にかけていたとは思えない。

 琴子は絶乃が一体何者なのか尋ねたが、絶乃はそれを知る事に意味があるのかと逆に返され、琴子はもう何も言えなかった。

 その日、かれんの看病疲れで琴子も学校を休むよう絶乃は連絡を学校に入れた。そして、絶乃は出勤する前に琴子にこういう。 

 

「今日でこの呪いは終わるから、明日から何も考えずに学校に行けるようになるよ。約束しよう。それと、かれん君が目覚めたらこれで学園の寮に戻るようにいいたまえ、そして琴子君は」

 

 一万円札をテーブルに置き、絶乃が出て行くのを見て自分も行こうとするが、妙な睡魔に襲われ、琴子は再び眠りについた。

 

「さて、これでよしと……ボクの予想が正しければ多分そういう事だろうね」

 

 絶乃は呪いの発生原因について一つ確信できたことがあった。かれんでなかったという事、あと自分を恨む可能性があるのは生徒会。

 それも風紀員の二階堂華。彼女に用がある事を伝え、呼び出していた。絶乃が生徒会室の前にやってきた時、華は一年生の女性の唇を吸っている最中だった。

 

「おや、お邪魔だったかな?」

 

 そこには袴を来て、たすき掛けをした華の姿があった。そして華を求めるように唇を吸い返す少女。華は少女の制服の中に手を入れて少女を楽しませる。

 

「美香、離れていてくれ。お客さんだから」

 

 華がそういうと絶乃の事をぼーっと焦点の合わない目で見る。それを気持ち悪い物を見るように絶乃は見て、華の服装を続いて眺めてこう言った。

 

「正装かい? それとも死に装束かな?」

 

 目を瞑って瞑想でもしていたかのような華は瞳を開けると絶乃を捕らえた。そして絶乃に向けて本物の長刀を向ける。

 

「私が、この学園に呪いを振りまいているとよくわかりましたね」

 

 絶乃はケケケと笑って腰のホルスターに装備している銃を抜いた。

 

「かれん君だと思っていたんだけどね。獣臭かったから、あれはデコイか? 君の影武者をする為の、まぁ醜い姿だったよ」

「かれんの事を悪く言うな!」

 

 怒る華を見て再び絶乃は笑う。

 

「本当におかしな空間だ。女が女を好きになる。そして女が女を取られた事に恋路で嫉妬し呪いをかけると……君達は最初から狂ってる。そして純粋だ。どうやって悪魔を呼び出したのかはボクは分野ではないし、そこまで知ろうとは思わない。だけど、君は大人を怒らせてしまった。ボクはここの呪いの元凶を叩き潰す為に依頼された探偵だ。君」

 

 絶乃が銃を抜くよりも早く華は絶乃の銃を叩き落とした。そして地面に落ちた銃を器用に刃先で持ち上げて外に放り投げた。

 

「そこまで分かってるんですか? でも御剣先生の獲物はこれで無くなりました。そして長刀を持っている私はこの前とは違い近寄らせませんよ!」

 

 絶乃の口が裂けるように嫌らしく嗤う。再び華との距離を一気に縮めた。華は長刀を振り、絶乃の腕を裂いた。

 口を大きく開け、絶乃が痛みをこらえる。それでも華は絶乃への警戒を止めない。上段の構えを取り最長射程で絶乃の隙を探る。

 

「私が久世華奈という事も何処で?」

「あーやっぱり久世って君の名字か、まぁそこまでは知らなかったけど、二階堂華なんて生徒がこの学園にはいなかった事かな。これでも全生徒の顔と名前、身体データは調べさせてもらったよ。でも君からは何の臭いもしなかった。生徒会の子達も君の事は知らなさそうだったので、君は浮遊霊かなんかかと思ってたけど、まさか実体を持った生霊とは思わなかった。それは悪魔の力かい? さしずめ少女の生気でも与えればと言ったところかな?」

 

 出血する自分の腕を珍しそうに絶乃は眺めながら、わざと華の射程距離に入る。腕の傷はふさがり、落ちた血液は重力に逆らい絶乃の中に戻っていく。

 

「あなた、化物なの?」

 

 華が危険を察知したか、一歩下がった。そして華は詩でも詠むように自分と契約している悪魔を解放した。

 

「くろはね、でておいで」

 

 生徒会室の前であったハズの空間が歪む、絶乃はアトラクションを楽しむ子供のように目を輝かせ、何かの臓物の中にいる自分という異常を楽しんでいた。

 

「それが君の契約した悪魔か」

 

 牡牛の頭を持ち、四対の黒い羽を広げるゆうに三メートルは越える巨人。それは華の横に並び立ち、今にも絶乃に襲い掛からんとしていた。この世の者ではない存在、そんな化物を見て絶乃の瞳は狂気にゆがむ。

 

「くろはね、食べていいよ」

 

 華の掛け声と共にくろはねと呼ばれた化物は絶乃に牙を向けた。巨体からは考えられない速度で絶乃の肩を食いちぎる。

 

「あがぁあああ!」

 

 声にならない声をあげ、捕食される絶乃。その狂気の状況で、絶乃は感じ喘いでいた。くろはねの口には長い蛇のような絶乃の腸が咥えられている。華は自分達が圧倒的優位に立ち、それは覆らないと思っているが、妙な不安が華を襲う。

 

「はやく! くろはね、遊んでないで全部食べちゃって!」

 

 くろはねが絶乃の大腸を噛み切り、再び喰らいつこうとした時、くろはねの頭を絶乃は止める。

 

「まだ生きて……でももう無駄な抵抗……っ!」

 

 くろはねの頭がゆっくりと絶乃から離れる、否。絶乃が力で無理やり引き剥がしているのである。真っ赤に染まり、空っぽの腹部の傷が修復していく。巻き戻っていくかのように服まで元に戻る。

 

「少し気持ちよかったけど、ダメだ。それじゃあボクは絶命してやれないよ。見た目に反して君はたいしたことないなぁ。くろはね君だっけ? 君、位の低い悪魔だろ? 魅せてあげるよ。本当の絶望、絶鳴、絶叫を。こんなサービスめったにしないんだからね」

 

 絶乃の額から、刃物のような形の角が皮膚を突き破り生える。切っ先から絶乃の血を滴らせ、そして絶乃は酔ったような表情を見せる。

 

「さぁ、おいで。ボク、鬼神第六位・絶命鬼が相手をしてあげるよ」

 

 絶乃の手、肘、腕から額の角と同じ刃物のような骨が飛び出す。異様な姿となった絶乃それはゆっくりと華、そしてくろはねに向かって歩む。

 

「くろはね、そいつを殺してぇ!」

 

 くろはねは動かない。表情のないくろはねだったが絶乃を見て完全に戦意を喪失している。そんなくろはねを見限って華は持っている長刀を絶乃に振りかぶった。

 

「化物めっ! 覚悟ぉ!」

 

 風を斬る音がビュンと響き、絶乃の首を狩に行った長刀の刃は宙を舞う。絶乃の刃物のような形をした骨で受け止められ高度と粘度で長刀は劣った。

 

「すごいね人間は、この全身角のボクを見ても向かってくるんだ。それに比べて、悪魔はしょぼいね。こんな悪魔ならもういらないよね? 全く同じ角を持つ者として恥ずかしいよ。だから死んでいなくなれ」

 

 その言葉と共に絶乃は飛び、固まっているくろはねに向かって何度か自分の腕を振るった。ゆっくりと、くろはねの身体に線が入っていく。

 そして「どーん」という絶乃の呟きと共に何重にも細切れにされくろはねは絶命した。くろはねがやられた事でその場の空間が元に戻る。

 その様子をじっと見ていた華に次は視線を移して絶乃は優しく囁くようにこう言った。

 

「さぁ、お仕置きの時間だ」

「ひぃ……」

 

 華は走って逃げる。それを絶乃はゆっくりと歩いて追いかけ、ふと足元に先ほど生気を喫われていた少女、吉田の姿を見つける。虚ろな目で絶乃を見つめているので絶乃は吉田の髪を掴んで立ち上がらせる。

 

「まぁ、君でもいいか」

 

 そう言って唇を吸った。吉田の身体に刻まれた悪魔の刻印が消え、代わりにあまりの快感に痙攣し失禁する。

 

「ありがと、良い夢みなよ」

 

 急ぐわけでもなく、焦るわけでもなく絶乃は華を追う。学園に生徒が来るのはまだ数時間先、ここは完全に華と絶乃しかいない。

 今や華は逃げ惑う兎。

 絶乃は兎を狩るのに全力を尽くさない。それは獣のする事である。絶乃は鬼、それも神格を持った尊い存在。

 

「ボクが死を与えてやろうというのに、逃げるだなんて往生際が悪いし、とても心外だよ。どこにいるのかな? 生霊の華君は」

 

 わざと足跡をカツンカツンと響かせ自分の場所を知らせる絶乃。絶乃には華が何処にいるのか既に知っている。

 

「何処にいるんだい? 痛くしないよ? 出ておいでよ」

 

 声による脅迫。

 ありとあらゆる恐怖を植え付け、それでいて絶乃は満足そうな顔を見せる。絶命鬼。命を奪う事を喜びとする絶乃の本性であり鬼神。

 それが華の居場所を教える。

 

「みぃーつけた」

 

 屋上へと続く階段でガタガタとうずくまり震えている華の姿を絶乃は見つけ、彼女に振り下ろす為、ギロチンの刃のような腕を高く上げた。

 

「死ね」

 

 絶望と恐怖に歪んだ華を見て悦に入っている絶乃の後ろから第三者の声が高く、大きく響き渡った。

 

「やめて! 絶乃さん」

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