祖母との思い出

 その夜、私と涼太君は近くのファミレスで夕食を取った。

「結局、今日は六十六年前の事件について収穫が無かったね」

「そうだね。分かった事といったら、ただの第二発見者だと思っていた久住さんが乃利子さんと仲が良かった事くらいかな」

 涼太君が、ハンバーグを食べながら答えた。


「そういえば、乃利子さんって、どういう人だったの?大雑把な質問で悪いけど」

 涼太君の質問に、私は少し考えてから答えた。

「そうだな……一言で言うと、そそっかしいけど世話好きな人……かな」

 私が小学生の頃、私の忘れ物を学校に届けようとして違う物を持ってきたり、近所の家の花壇の手入れを手伝っている時に間違ってハーブまで摘み取ってしまったりした事を覚えている。


「……いつも他人の事を考えている人で……私、お婆ちゃんの事、大好きだった」

「そっか……」

「……まあ、そんなだから、長岡さんに付き纏われたのかもしれないけど」

 テーブルの上には、涼太君が集めて来た事件の資料が広げられている。祖母は、以前長岡さんに付き纏われている事を警察に相談していたようだ。碌に対応してもらえなかったようだが。


「明日、何か掴めるといいね」

「うん……涼太君、忙しいのに付き合わせちゃってごめんね」

「いや、いいんだよ。僕は、君の……恋人なんだから」

 わたしは、顔を赤くして俯いた。そう、私と涼太君は恋人同士になったのだ。夏希ちゃんの事件が解決して東京に帰る時、私は涼太君に告白された。そして、私はその日の夜に涼太君に電話して、涼太君の恋人にして下さいと伝えたのだ。


 夕食が終わり、私は涼太君に駅まで送ってもらった。この駅から私の自宅マンションの最寄り駅まで電車で十五分くらいだろうか。ちなみに、涼太君はこの駅の近くのホテルに泊まる予定だ。

「……じゃあ、また明日、美也子ちゃん」

「また明日、涼太君」

 しばらく沈黙が流れた。


「……美也子ちゃん」

「何?」

「……ちょっとだけ、抱き締めてもいい?」

「……うん」

 私の身体を、涼太君の逞しい腕が包み込んだ。


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