ハイキング気分できたけどどこまでいくの?
スワップ団の船が停めてある港からバー二ーとベニスが向かった温泉地へのルートを途中から見覚えのない獣道を通り、乾いた地面を靴底でジャリジャリとスクラッチさせながら日当たりの悪い裂け目を抜け……。
「……はぁ、はぁ……っ、はぁ」
プラグちゃんにはちょっとキツイ行程……。
「ねぇ、まだ着かないの?」
あたしは歩幅を緩めずに進む津島に声をかける。
「一番安全なルートを選んでるから到着はまだまだかな?」
と、ちょっとしたハイキング気分できていたのが登山旅行にいつの間にか変わっていた。
うねうねと細い裂け目を息を切らしながら縫うように勾配の激しい登り下り、
学校行事の遠足を思い出す。
子供の頃はこういった獣道でも楽しくおしゃべりしながらだったので、ちょっと長くても我慢はできた。
けど……。 高校生になってもこんなこと、つい最近あったかもしれないけど、ハッキリ言って『ムリ!』
だってあたしインドア派のピアノジャンキーよ! 指先を動かすのは何時間でもできるけど、そんな身体を動かすなんて……。
吹奏楽とか、歌唱とかじゃないんだから無理!
「もう少ししたら広い場所に出るからそこで休憩にしようか?」
と、学校の先生みたいな言い方でもう少し頑張れというけど、うん、ムリ!
三つのスクラッチ音の一つが止まる。
「ごめんなさい少し休ませて……。」
と、ここでプラグちゃんが根をあげる。
立ち止まり腰を折って両手を膝にのせ、胸で息してるのがわかる。
津島がその場で足を止め振り返る。
ここだけの話しだけど、あたしもそろそろ限界。
一応プラグちゃんの前だから軽く息を切らす程度で耐えてるけど、その場に座り込みたいのが本音。
やっぱり男女比の差は大きい。
津島に至ってはピアノを調整するための道具だろうか? ちょっと大きめの背負い袋を下げてるけど息切れを起こしていない。
「仕方ないか……。」
津島も壁に背中を預け小休止に入る。
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