彼は津島、津島紀之と名乗る。

　津島……。　ツシマ、ツシマ……。どこかで聞いた事がある。

　えっと確かエーデル島にいた時に奥様方がツシマがどうたらこうたらで、あの頭のおかしいツアーガイドがこの世界に連れて来たとかなんとかだっけ？

　二十八話からその辺で奥様がたの話題に上ったり、島民の人がすぐに行方不明になったとかなんとか……。

　あたしにもう少し話術とかコミュニケーション能力があれば情報通の奥様方に話を聞くことができたんだけど、記憶にも止めず流していたんだっけ？

　「へぇ、それでエーデル島からここまで来たんだ、そういえばツアーガイドは？」

　と、お互いに日本人である事とあの、頭のおかしいツアーガイドによって異世界転位させられた事に関してを話し、ツアーガイド不在の件を問われる。

　「エルは死にました」

一言だけ……。　客船が沈没する前にエルがあたしをどこかに飛ばし、仲良くなった人魚がエルのユニフォームを海底からもって来た事を一言で伝える。

「ありえねぇ！あの頭のおかしいツアーガイドが人助けして死ぬなんて絶対ない！」

　ツシマ……。津島紀之に否定される。

　　……。

　確かにそうだ、こうして、言われて見ればエルが死んだことに納得できない部分がある。

　もしかしたらホントは生きてるんじゃないか？

　イヤ、それ以前にあのエルのことだ！　船が沈没する前に絶対逃げ出しているはず。

もちろん、エルが死んだことに関して確証もないし、例え生きていたとしてもそれすらも確定ではない。

　多分、エルのことだから、そのうちひょっこり現れるはずだ。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい