幹のように太い腕に松茸のように太くて長い指先
幹のようの太い腕がボコボコに盛り上がり、こんな豪腕の先の指先もまたピアニストとは思えない松茸のように太くて長い指先が鍵盤の上でハンマーを打ち付けるような演奏。
あたしもまた、ピアノクラッシャーとして自負しているけど、彼こそが真のピアノクラッシャーじゃないかと疑うほどの力強さ。
あたしの指先が踊るように鍵盤の上を舞うのと比較にならないほどの演奏。
圧巻の指捌きが眼下で繰り広げられていた。
重低音の音の圧力が鍵盤越しに伝わる。
団長の音圧が船を抑えこみ洋上で揺れないようにしていると思ったけどそれは違うようだ。
団長の演奏は船を抑えつけているんじゃない。
波そのものを抑えつけているのだ。
船も揺れない、潮風も遮られた状況ならばあたしも本気をださなくてもそれに近い演奏が出きるはず!
セコンドである伴奏に負けないように、そしてあたしの指捌きがセコンドの支配に合わないように呑み込まれないように団長の奏でる音色に立ち向かう。
本来ならセコンドはプリモに合わせるのが鉄則なのだが、それを無視した演奏は一言で言えば戦い。
主導権の争いと言っても過言ではない。
低音中心の団長の演奏と高音での演奏のあたし。
異世界転移ツアーから元の世界に強制送還されてからの演奏でピアノへの情熱が感じられなくなり、そこから異世界へ舞い戻るもピアノを前にしても情熱は沸き上がらず、本気にもなれなかった。
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