すべてを知っているかのような団長、そして椅子をポンポン
展望デッキ室内は明るくピアノを演奏するには最適な状態だ。
波風の影響を受け足元が安定しなければもっといいんだけど、文句を言っても仕方がない。
あたしはトトトトト。と急ぎ足でトムソン椅子へ駈け座る。
鍵盤蓋を開き、白と黒の鍵が規則正しく並ぶ鍵盤の上、手をおくポジションに両手を添え、試しに音を鳴らす。
ーー-♪♪♪♪ー-
ノッケからあたしは首を傾げる。
音は正しく出ているし、響いてもいる。
だけど違う。
あたしが求める音ではない事は確かだ。
もちろん、それはあたしが本気をだせなくなったというのもあるけど、それ以前に環境が不安定なのが要因だと思う。
♪~♪♪♪♪♪~♪~
ピアニストと言えば練習曲は猫踏んじゃった1択。
音の響かせ方も早さもリズムも練習にはピッタリ。
もちろん、少しアレンジを加えて猫踏んじゃったを猫に踏み潰されちゃったバージョンにして演奏。
「やっぱり違う」
あたしの頭の中で流れる音と響きにかなりの差と違いがある。
~♪……。
鍵盤の中心<ド>の音を叩き、音を響かせる。
素子、何度も何度も確認するように鍵盤を叩いていると……。
「どうだい? 次代の奏人さん、洋上の演奏は難しいだろ?」
「!!!!!!」
1つの音に集中して確認していた時だ。
突然かけられた声に思わずびっくりする。
「団長がきたわよ。 団長の演奏聴いて見る?」
バーニーが団長の到来を告げる。
もう一度だけドの音、鍵盤の中心を叩き音を確認してから私はゆっくりと立ち上がり席を変わる。
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