ボールは友達じゃないけどピアノはあたしにとって友達

「カノン様ぁ……、ツメコミ過ぎは良くないですよぅ」


 揺れる船上の上。

 甲板の上で働く人々を眺めながら、あたしはバーニーを側においてピアノと向き合っていた。


 重厚で巨大なその存在感、漆黒の黒い本体。

 少し練習をしたくてピアノ本体の手入れをさせて貰い、天板を開いて弦の張り具合やハンマーの動きを確認しつつ各所の留め具の確認もしながら、ピアノの構造自体をみていた。


 「これ、普通のピアノだけど、普通じゃないよね?」 との問い掛けにバーニーは、ピアノの構造や性質については全く理解していなかった。


 「だって、ここの天板を支えるの留め具も少し大きめだし弦の太さや色もあたしがが知ってる弦とは違うし、」


ーーコンコン!-― 


 ピアノの天板や側板のアチコチを軽く叩いて音を確認しながら

 「ホラ、普通のピアノはこういうところ木製なのになんか素材自体も違うし、厚みも違う! 材質が違うのにこれだけの音をだせてるんだから、やっぱり違うでしょ?」


  と、ピアノの手入れをしながらバーニーに問いただすけど、あたしが欲しい解答には及ばず、『そんなのわかんないよぅ!』 と困惑していた。


「1つだけ言えるのは洋上で使えて劣化しにくくしてあるってことかしらね?」


 普通のピアノとの違いに簡単な着地と解答を出した後も八十八コある各音階の鍵盤を1つずつ丁寧に何度も音を響かせて確めたりしていた。


 そしてその後はピアノの練習曲、童謡から猫踏んじゃったから始まり、カエルの合唱、ドレミのウタ等、思い付く楽曲を空が燃えあがり海面が朱に染まるまで練習していた。


 「そろそろご飯だけどどうする?」

 

 と、バーニーに聞かれあたしは腹のムシが鳴ってる事に気付く。

 

 「演奏できる人ってみんな変態だもんねぇ」


 と、何時間もピアノの練習に付き合ってくれたバーニーが呆れ顔で船内へ案内してくれる。


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