騙された?

暖かい日差しが灯台の出窓から差し込むと同時、温まり過ぎた室内も出窓から入ってくる潮風がまざり心地好い温度となっている。


  無機質な室内には何故か一台のピアノ。


 あたしの中で消え去ったピアノへの情熱は沸き上がるアガル事がなく、本気での演奏はできなくなっていたけど、普通に演奏できるくらいにはなっている。

 

 おちんちん島で、沸き上がる情熱が感じられなくてパニックになってしまったけど時間が経てば冷静に考える事ができる。


 修学旅行という環境というのもあったかもしれないけどこうして冷静になる時間をもらえたことに関してはエルには感謝しかない。


 だけどだ! だけど

だけどだけどぉぉ!

 

 「何が異世界転移クルーズツアーよ!」


 思い出しただけで微妙な気持ち! 

 初めて乗るクルーズ船ということで、映画やイラスト、模型で観たことのある白い帆船の巨大な船!


 現代の子供から大人まで、それをみただけで、夢や憧れを抱く帆船。


  拠点となる部屋まであって、さらにドレスまで着せてもらって甲板にまで出て、バタバタと風を受けてはためく白い帆船。


 そして水平線の彼方にまで広がる青い海に感動までしたのに!


 外に設置されたピアノを演奏しようとしたら視界が変わってあたしが今いる状況!

 

 人の気配も全くない灯台でした……。

……。

…………。

……。


  あたしが今いる階層の下は既に水没。 どうやらここは灯台の最上階らしいのだけど、もしかしたらこの最上階も海に呑まれてしまうと考えるとここからの脱出を急がなければならないんだけど……。


 「ああああああ~」

「あ~あ♪ あ~あ♪ あーあ?」


 そう…………。


この子達の笑顔を見るだけで水没の危機だけじゃなくピアノへの情熱が湧かない事や、エルに騙された事なんてどうでもよくなってくる。



 

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