インドネシアにあるクリトリス島そこまでは行っていいんだけど

大勢の観衆に包まれたステージの上、制服から貸衣装のドレスを身に付け、あたしはピアノと対面するようにすわっていた。


 ど う し て こ う な っ た……。


あたしのグループ、理恵子にそそのかされて岩佐と共にインドネシア諸島にあるクリトリス島。


 この、クリトリス島までは行ってもいいとされていたが問題はこの先、クリトリス島からその向こう側に点のように見える島。

 

 そこが行ってはならない島。 地図に記載されていない名もない島で現地の人は、おちんちん島と呼んでいるらしい。

 正確にはオーツィンティンだ。


『さぁ!日本の修学旅行生の飛び入り参加です!日本の若いピアニストはどんな演奏を聞かせてくれるのか!』


 何故か流暢な日本語で演奏を勧める。

  もちろんこの日本語の後に続いて現地の言葉で叫び会場を盛り上げる司会者。


会場には沢山の観衆で溢れ静寂に包まれている。

 どこかでみたような既視感。


 忘れもしないエーデル島での会場を思い出す。


 譜面台の上には本来あるはずの譜面がおかれていない。


 

……。

 あたしはあの時のおなじ状況に既視感を覚えると共に違和感を感じていた。



ピアノが目の前にあればとにかく触りたい。音を奏でたい。 演奏したい!


 病的なまでにあたしはピアノに夢中になっていた。


 演奏している自分に酔い。恍惚となり、身体の芯まで燃え上がるようなジンジンとした熱さと快楽があり、沸き上がる感情と情熱が、あった。


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