あたしは犯罪者じゃない!

ざわつく周囲の喧騒に包まれ、あたしは鎖とポールで囲われたピアノの前で数人に抑えられていた。


 「いい、カノン! こんなところで問題起こさないで! あたし達の修学旅行がホテルで監禁なんて絶対にイヤなの! わかるよね?」


 前からはタックルするように押し込まれ背中は羽交い締め、さらには両手を片方に1人ずつという犯罪者を取り抑えるような状況。

 

 前後の記憶が全くない状態で一体コレはどういう状況?


あたしは確か、つい先ほどまでエーデル島にいたのを覚えている。


 

 異世界転移ツアーへほとんど説明のないまま連れられこの世界には……。


 そもそも異世界転移って実際問題どう説明したらいいのかしら?


  例えばリアルなこの世界ではない、パソコンの中の世界とか漫画やアニメの世界と言ったらいい?


 赤ずきんちゃんの世界の赤ずきんちゃんが桃太郎のお話の世界へシュンッ! って跳んだようなイメージ……。

 

 どう説明したらいいかわからないからこんな変な例えなっちゃったけど、その世界であたしは数年ぶりのピアノの演奏をお腹いっぱいになるまで堪能してきた。


 実際はそれだけじゃない。エーデル島でアリアと出逢い、あたしは奏人という役職に就任。


 元? 現、奏人のアリアの横にならんで奏人の仕事を学んでいたんだけど……。




「ねぇ落ち着いて……。落ち着いて! 暴れちゃダメよ力を抜いて、ステイホーム、ステイホーム……。」


 「ドウドウドウ……。」


 あたしを大人しくさせるための周囲からの声。


 こんな状態でこんな状況、力を抜けと言われても自然と力が入ってしまうのは仕方ない。


「 ワケわかんないぃ! ちょっと離してぇっ!」


 あたしは思わず叫ぶ。


それから数人がかりで

 抑えつけられて大人しくしている事を条件にゆっくりと解放される。


 やっと解放され自由になった身体、ふらっと一歩。


  

 



同じ日本人の同じ制服の集団。

 

 日本の長野県諏訪地方の有名な高校の修学旅行真っ最中。

 

 通り過ぎる数人の外国人がチラ見してくるが、この騒ぎに辺りは騒然としているもののこの一幕に介入してくる影はなかった。



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