[斬首] レクイエム、無音の中に浮かんだもの
あたしの演奏が臨界を超えて限界を突破しているのがわかる。
鍵盤から伝わる熱と、周囲の閃光。 そしてその中心たるあたし。
あたしがピアノと一つになり閃光を発しているのがわかる。
薄暗かった聖堂が真昼のように明るく全てが照らし出され全てが閃光にのまれている。
アリア自身、いつの間にか長椅子に座り机に肘をついて手を組むでいる。
アリアとその隣に全ての閃光を受けとめてなお閃光を弾き返すツルツルのリバースヘッドの長老。
えっ? 確かこの大聖堂はアリアが誰も近寄れないように人払いしていたハズだったような……。
アリアが指を組み祈りを捧げるように演奏に耳を傾ける反面、長老はツルツルの頭で閃光を跳ね返しながら不敵の笑みを浮かべていた。
この曲のメインとなる山場を越えた時だ、あたしの頭の中にこの曲のタイトルが閃く。
…………。
【斬首】
かなり物騒なタイトル。
何故? こんな物騒なタイトルが浮かんだのかわからないけど、斬首の山場を越えゆっくり終止符へ……。
そこからあたしは一呼吸おいて無音を作る。
この曲名は皮肉な事にはアリアの母親、イーファが斬首されたことからなのかもしれないけど、その事がなければもっと別の曲名が浮かんだかもしれないけど…………。
考えても仕方ないかもしれない。
この無音をいれたのは、イーファへの黙祷のための無音。
そして、終止符。 パタン……。 と鍵盤蓋をおろし、一礼。
あたしはアリアがあたしに望んだ事をしたつもりだったけど、アリアはこれで満足してもらえただろうか?
ゆっくりとした所作でアリアへと近付く。
アリアはあたしが目の前に到着するまで瞳をとじたまま。
あたしの演奏に何を思い、イーファに対して何を祈ったのかはわからない。
だけど、これだけ真剣に祈っているのだとしたら、あたしの演奏もアリアに届いたのであろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます