朱に染まる鍵盤と指先、カノンの本気! 届けレクイエム
「アリア、本当のレクイエムをアナタにそしてあなたのお母さんにも届けてあげる」
炎の色に薄く染まる鍵盤の上、あたしの指先も朱に染めると鍵盤の上で炎が揺れるように舞っているかのようだ。
緩やかに揺らいでいた燭台の炎もあたしの演奏に合わせるかのように燃え盛る。
レクイエム特有のゆっくりとしたではない。
モーツァルト作曲の【怒りの日】 が激しい旋律で有名なレクイエム。
誰もが聴いたことがある曲だろう。
だけど、あたしは怒りという感情ではなく安息を伝えたい。
イーファには喜びと安息をアリアには喜びと安らぎと安心を!
この大聖堂に置かれているピアノの感触ヌードバーにあるバーチカルよりもかなり頑丈にできている。
鍵盤の鍵を叩けば弦もハンマーも良く調律されていてあたしの本気に応えてくれる。
そして本体も天板も同じく、あたしの響きを受けとめてくれているのがわかる。
バーチカルのピアノではないのが一番。
アリアやイーファだけに伝え、届けるだけではなくそれはあたしにも届くようにあたしは全力全開! 本気も本気のカノンの本気!
揺らめく燭台の火も燃え盛る炎となり、薄暗かった大聖堂内が閃光に包まれるような発光。
今までピアノに触れることができなかったのにアリアとの出逢いによってピアノに触れることができ、しかも本気、本気の本気での演奏ができる事に感謝。
そのためのアリアとの出逢いに感謝を込め、尊い犠牲となってしまったイーファへの感謝を込めての演奏…………。
なに一つかけてもあたしがこうして演奏できるチャンスはなかった。
だからこそあたしは、あたしからアリアだけではなくあたしからイーファへの感謝も込める。
…………。
ありがとう、アリア……。
あたしの指先が鍵盤の上でワルツを踊るように滑らかに左右する。
演奏しているあたしまで気持ちよくなってくるのがわかる。
この曲を誰が作ったのかはわからないし、故郷にある最高難度の曲には残念だけど届いてはいない。
アリアが演奏していたフレーズを越える。
この先はあたしにはわからない。
だけど奏者としての悪い癖。
その曲のアレンジやその続きを思い描くと指が止まらなくなる。
未知の領域への突入。
陸上選手やトップアスリートにあるランナーズハイという現象は誰にでもあり、ピアノ奏者にとっても例外はない。
アリアとイーファへの感謝を捧げ、あたしの思いを込め、その続きをあたしの指先が紡ぐ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます